第5節「砕けたシンフォギア」
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て、躾の程度がうかがえちゃうわね」
「ッ!?」
背後から聞こえた女の声。
振り返るとそこには、壁にもたれて立っている少女の姿があった。
青いメイド服に、クリスや翼の前に現れた女達と同じ、人外じみた白い肌。
そして両足の膝は、球体状の関節になっていた。
少女人形は一瞬で青年に近寄ると、その顎に手を添える。
そしてつま先立ちになると……翼を襲った緑の女のように、青年の唇を奪った。
「……ん、チュッ──」
「う、うう、んんっんんんん……」
青年の身体から玉虫色の光が、少女人形の唇へと吸い込まれていく。
光が吸われる毎に青年の髪は白く、肌は瑞々しさを失っていき、青年は苦しみ悶える声を上げようとした。
しかし、その声が届くことは無い。
塞がれた唇は青年の全てを吸い取って行く。助けを求める苦悶の悲鳴さえも……。
「……ふふっ、御馳走様」
少女人形がようやく唇を離し、舌なめずりをする頃、青年は糸が切れたマリオネットのように、力なく地面へと転がった。
──この日、現場周辺で青年と同じような状態で発見された暴走族の一団がいたとの報告が入っている。
ff
「どうしても戦わないと言うのか……ッ!」
「だって、さっきのキャロルちゃん泣いていた……」
「──ッ!」
泣いていた……だと?
「だったら、戦うよりも、その理由を聞かないとッ!」
「……見られた、知られた、踏み込まれた」
キャロルの表情が強ばる。
唇を噛み締め、歯を食いしばり、次の瞬間には響を睨む瞳に怒気が宿る。
薮蛇かッ!さっきの攻撃もかなりの威力だったが、次の一撃は多分、今度こそ本気で来るッ!
「くッ!……世界ごと──」
「響、伏せろッ!」
「ぶっ飛べぇぇぇぇぇッ!」
鳴らした指から、樹木のそびえる大地を象った紋章が、魔法陣の中心へと配置される。
【エンシェントバースト】
空間に歪みが発生するほどの、未確認のエネルギー。琥珀色の奔流が大地を抉り、渦巻きながら押し寄せる。
重力を操っているとしか形容しようのないプレッシャーは閃光を伴い、盾と構えた弓を押し退けんと圧する。
まともに受ければ、力の奔流に呑まれ、押し流されながら十数メートルほど吹き飛ぶのは確実だろう。
「あああああッ!!」
「翔くんッ!!」
「この……ぐうううッ!!おおおおおおッ!!」
それでも、この背に庇った彼女だけは、傷ひとつつけさせてなるものかッ!
射撃時の姿勢固定用に設計された、踵部のアンカーを展開し、地面に鉄杭を食い込ませる。
耐えて、抗い、防ぎきれ。仁王立ちこそ、守りし者の真髄なれば。錬金術士、何するものぞッ!!
『響ちゃん大丈夫ッ!?響ちゃんッ!』
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