第三章
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「このわしがな」
「大声のお主がな」
「その勝負が好きでもな」
「そうだな、あれが新幹線か」
「聞いていた以上か」
「遥かにだ」
それこそという返事だった。
「あれは」
「そうであったか」
「うむ、あれは敵わんな」
「全くだ」
ずいとん坊はこうも言った。
「わしといえどもな」
「そうだな、ではだな」
「うむ、わしの負けというよりかだ」
「相手にもならんな」
「あんな音ははじめてだ」
そこまでだったというのだ、新幹線に音は。
「まことにな」
「そうであったな」
「そうだ、もうこれは勝負どころではない」
それこそというのだ。
「だからな」
「もうこれで帰るか」
「いや、大阪見物を再開しよう」
こうシルクハットに述べた。
そうして鳥の姿で新大阪駅に戻ってまた人の姿になった、見ればその姿は何処か狸に似ていた。太った中年男の姿だ。
ずいとん坊はその姿できつねうどんを食べつつ同じものを食べているシルクハットに対して言った。
「いや、まことにな」
「新幹線の音はだな」
「あれは凄い」
「そうだな」
「人はあんなものを造ったのか」
「恐ろしいことだな」
「ただ速いだけではない」
風の様に速いだけでなくというのだ。
「それと共にな」
「音もな」
「凄まじいな」
「最初に鉄道を見た時も驚いたが」
「しかしな」
それ以上にというのだ。
「あの音がな」
「凄かったな」
「全くだ、あれはだ」
あの音はというのだ。
「敵わん」
「お主もそう言うだけだな」
「恐ろしいものだ、世の中上には上がいるが」
「音も然りだな」
「それがわかった、だからな」
それでとだ、ずいとん坊はきつねうどんの揚げを食べながら言った。
「新幹線には乗りたいが」
「勝負はせんか」
「そうする、それで徳島に戻れば」
その時のことも話した。
「阿波踊りの季節だからな」
「あの踊りを見るか」
「今年もな」
「それがいいな、しかし世の中どんどん変わる」
シルクハットはこうも言った。
「明治からも変わったが」
「大正もそうでな」
「昭和でもだ、特に最近はな」
「凄いな」
「全くだ、あんな速い電車まで出てな」
「とんでもない世の中になったな」
シルクハットはさらに言った、
「テレビや選択気、冷蔵庫まで出てな」
「いや、江戸時代とは全く別じゃ」
「そうじゃな、これからもな」
「果たしてどうなるか」
「わからぬな」
「新幹線より凄い音を出すものが出て来るやもな」
ずいとん坊は音のことからこうも言った。
「若しや」
「そうやも知れぬな」
シルクハットも否定しなかった、そうした話をしつつ二匹できつねうどんを食べ。
二匹は徳島に帰って阿波踊り
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