第三章
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「お前はまだ行ってないんだな」
「今年は横浜と神宮だけだよ」
「そうか、じゃあまだ知らないな」
「ああ、けれどここはな」
昴はあらためて川崎球場の話をした。
「予想以上にな」
「酷くなってるんだな」
「ただでさえボロボロだったのにな」
「それがか」
「ああ、もっと酷いよ」
「何時使えなくなってもおかしくないな」
「本当にな」
こんな話をしながら試合を見守った、試合自体は普通のものだったが兎に角球場の老巧化が気になった。
この時から昴は元々セリーグファンだということもありロッテの本拠地である川崎球場に行くことはなくなった。やがて彼は結婚し子供が出来てロッテも千葉マリンスタジアムが出来るとそこに本拠地を移した。
「もう川崎球場も使わないんだな」
「ああ、千葉の方に移ってな」
父は孫を連れて来た息子に話した。
「そしてな」
「これからは千葉県で試合していくんだな」
「今度の球場はかなり奇麗らしいぞ」
「川崎と違ってか」
「大リーグの球場みたいにな」
「日本も変わったな」
「そうだな、俺達の子供の頃なんてな」
すっかり年老いた茂はそろそろ太ってきた息子に言った。
「野球出来ること自体な」
「よかったんだな」
「それであんな球場でも野球出来たらいいって感じでな」
「やっていっていたんだな」
「ああ、けれどな」
それでもというのだ。
「それがな」
「変わったんだな」
「そうだよ、東京ドームが出来てな」
「千葉にそんな球場も出来たんだな」
「福岡にもドーム出来て大阪や名古屋にもだろ」
「どんどん凄くなるな」
「球場もな、もうああした球場はなくなるさ」
川崎球場の様な球場はというのだ。
「日本からな」
「時代は変わるんだな」
「昭和から平成になったしな」
それ故にというのだ。
「世の中も変わるさ」
「それで球場もか」
「そうさ、それあの球場は本拠地のチームもなくなったんだ」
「それじゃあそのうちか」
「そうなるだろうな」
こうした話が為された、そして実際にだった。
川崎球場は建て替えられることになった、昴はその話を聞いて勤めている会社でこんなことを言った。
「あの球場には子供の頃結構行ったけれどな」
「もうなくなるんですね」
「建て替えて全く別の球場になるんですね」
「これからは」
「そうなるんだな」
このことを感慨を込めて言うのだった。
「そう思うとボロボロの球場だったけれどな」
「懐かしいですか」
「係長としても」
「ああ、本当にな」
もうすぐ課長になる立場で言った。
「全然いい球場じゃなかったけれどな」
「ボロボロで、ですね」
「そうした球場だったんで」
「いい球場じゃなかったですか」
「人も少なくて流し素麺して
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