第三章
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「私は彼は嫌いであるが」
「それでもというのです」
「この度のことは」
「ドゥーチェらしいと言っておく」
周りに話した。
「その様にな」
「左様ですか」
「臨席されずそしてマエストロにそのまま初演を指揮してもらう」
「そう決定されたことは」
「彼は自分の誇りの為に臨席せず」
そしてというのだ。
「イタリアの為に私の初演の指揮を許した」
「そのことがドゥーチェらしい」
「そうだというのですね」
「この度のことは」
「私の初演を妨げなかったことはな、では私もだ」
口髭が特徴的なその顔で言った、目はくぼみ丸くその目の光が小柄な身体全体を照らし出している様である。
「是非だ」
「初演を成功されますね」
「その様にされますね」
「これより」
「その様にする」
こう言ってオーケストラや舞台の練習を徹底させた、その指導ぶりはいつも通りの完璧主義であり駄目出しも多くトスカノーノの仇名に相応しかった。
彼は何度も怒ったがそれでも練習は進み遂にだった。
初演の日が来た、歌劇場に来た者は誰もが期待に胸を膨らませていた。
「マエストロプッチーニの最後の作品だ」
「名作であることは間違いない」
「マエストロの作品で失敗作は殆どない」
「名作ばかりだったしな」
「そのマエストロの最後の作品だ」
「一体どんな名作だ」
「この目で見せてもらう」
是非にというのだ。
「耳でもな」
「だから楽しみだ」
「今日ここに来てよかったと思える筈だ」
「さあ、どんな作品だ」
「しかも指揮はマエストロトスカニーニだ」
イタリアを代表する指揮者である彼のことも話された。
「名演にならない筈がない」
「そのことは約束されていますぞ」
「さあ、どんな上演になる」
「楽しみで仕方ないぞ」
皆こう言っていた、そしてだった。
誰もが席で待ち遠しくて仕方なくなっていた、そして。
遂に舞台がはじまった、プッチーニの音楽も彼が選んだ脚本もよかったがトスカニーニの指揮もよく。
舞台は素晴らしいものだった、第二幕まで観て誰もが言った。
「これは素晴らしい」
「これ以上はないまでの舞台だ」
「流石だ」
「流石マエストロプッチーニの最後の作品だ」
「そしてマエストロトスカニーニの指揮だ」
「オーケストラも歌手もいい」
「舞台も申し分ない」
その何もかもがというのだ。
「ここに来てよかった」
「我々は幸せだ」
「神に感謝しないとな」
「さあ、いよいよ終わりだ」
第三幕、最後の幕が開くというのだ。
「一体最後はどうなる」
「どういった結末だ」
「それを観せてもらうぞ」
観客達は胸を躍らせていた、もうカーテンコールの時のことを考えている者すらいた。そして最後の幕が開き。
舞台は
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