第十五話 幸せの中でその七
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「美味しいお店あるんだ。この商店街に」
「そうなの」
「この商店街は美味しいお店が一杯あるけれど」
その中にだ。その店もあるというのだ。
「何処にも負けない位美味しいよ」
「そうなの。それじゃあ」
「先にそのお店に行くのね」
「それは何処なの?」
千春は希望にその店が何処にあるのか尋ねた。
「何処のお店なの?」
「あっ、そこはね」
何処なのかとだ。希望は千春にすぐに答えた。
「この入り口から百メートル位行ってね」
「ここからなのね」
希望はその入り口の方から商店街の中を指し示した。商店街は一直線に何処までも続いている感じだ。広い道、商店街らしく規律ある模様の道の左右に店が並んでいる。実に色々な店がある。
その商店街の左右を見ながらだ。希望は千春に話した。
「右手にあるよ」
「あっ、あそこね」
「そう。あのお店だよ」
丁度の百メートル程先の右手にだ。洋風の入り口の店があった。
その店を見てだ。千春は言った。
「ムゼッタっていうのね」
「何か可愛い名前のお店だよね」
「エルザもそうらしいけれど」
二人が後で行くことになっているアクセサリーショップの名前も出して言う希望だった。
「あのムゼッタもオペラの登場人物の名前らしいね」
「ムゼッタっていうと」
「千春ちゃんは知ってるかな」
「プッチーニのオペラよね」
イタリアの音楽家である。多くの名作を残した二十世紀初頭の作曲家だ。
「確か」
「プッチーニって人のオペラなんだ」
「作品の名前はラ=ボエームね」
千春はそのオペラのタイトルも言った。
「凄く奇麗な作品だったよ」
「千春ちゃん知ってるんだ」
「だって。観たことあるから」
「えっ、あるんだ」
「八条歌劇場でね。観たことあるよ」
二人が今いる神戸市長田区八条町にある歌劇場だ。かなり大きく豪華な歌劇場として知られている。それも世界的に知られた歌劇場である。
その歌劇場についてだ。千春は希望に話すのだった。
「一度ね」
「あの歌劇場行ったことあるんだ」
「凄くいい場所だよ」
千春はにこりと笑って希望に話していく。
「今度はそこも行こうね」
「オペラって」
「オペラは嫌い?」
「嫌いっていうか何ていうか」
オペラと聞いてだ。希望はそれだけで極めて高尚なものを感じていた。オペラを芸術だと聞いていたからだ。それでこうこう考えたのだ。
「僕には縁のないものじゃないかな」
「あるよ。誰にでもね」
「誰にでも?」
「そう、あるよ」
千春は希望にこう言うのだった。
「オペラってそんなに難しいものじゃないから」
「そうかな。僕にはとて
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