第一章
[2]次話
CRYSTAL HEAVEN
街の至るところにガラスがある、もうガラスのない場所なんて殆どない。それこそ街全体がガラスケースの様だ。電車に乗っても窓にはガラスがあってそこから景色が見えて映っている私や周りの人の姿が見える位だ。
私は仕事の行き帰りもオフィスでも家でもガラスが傍にある、透き通っていて何もかもを映し出すそれを見ている。それを見ない日もない位だ。休日でも家にいて窓のガラスを見る。
今は仕事帰りに喉が渇いたので一緒にいた同僚と話してちょっと休んで喫茶店にいるけれどだ。
窓を見るとガラスがある、それで私は一緒にいる同僚に言った。
「ガラスのない場所ってないわね」
「ガラス?そんなのね」
それこそとだ、同僚は私に素っ気なく答えた。特に何でもないといった口調だった。
「もうね」
「ない場所はないわね」
「何処でもあるわよ」
それこそという返事だった。
「ガラスは」
「そうね」
「窓にはガラスよ」
「そうね」
「もうそれは決まってるわ」
「お家でもね」
私は自分からも言った。
「あるわね」
「オフィスでもね」
「どんなお店でもね」
「本当にね、透けていてね」
「それで映し出して」
「もう何処でもそうよ」
「そうよね、それできらきらとしていて」
ガラスは光も反射するからだ。
「眩しい位ね」
「ええ、けれどそれがどうかしたの?」
同僚は私に紅茶を飲みながら言って来た、私も紅茶を飲んでいて共にミルクティーである。
「急に言い出して」
「いえ、本当に今は何処にもガラスがあるってね」
そうだとだ、私は同僚に答えた。
「ふと思ってなの」
「言ったの」
「そうなの」
「それだけ?」
「ええ、それだけよ」
実際にだ、
「本当にね、深い考えはないわ」
「そうなのね」
「昔はなかったのに」
「今ではそうよ」
「何処でもなのね」
「ガラスがあるわよ、街の何処でもね」
「そしてお店でも」
お店があるならだ。
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