第十五話 幸せの中でその二
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「一ついいお店を知ってるよ」
「どのお店なの?」
「名前はエリザっていってね」
「エリザ?」
「ええと。確か」
話しながらだ。希望はかつて誰かに、その誰かは今は思いだせないがその人に言われたことを思い出しながらだ。千春に話したのである。
「ワーグナーだったかな」
「ドイツの音楽家よね」
「そうそう、ドイツの音楽家のね」
ワーグナーについては希望は学校の授業で習っただけだ。中学の音楽の授業でだ。
その知識からもだ。彼は話すのだった。
「その人のオペラの登場人物の名前らしくてね」
「それでエルザなの」
「うん、その名前のお店なんだ」
「そこがアクセサリーのお店なのね」
「あの商店街のね。そこに行くのかな」
「うん、行こう」
満面の笑みでだ。千春は希望を誘ってきた。
「一緒にね」
「デートだね」
「そうだよ、デートだよ」
それそのものだとだ。千春も答える。
「それに行こうね」
「うん、じゃあ今度の日曜でいいかな」
「いいよ」
日は決まった。あっさりと。
「その日に一緒に行こうね」
「そうしようね」
二人で楽しく笑って話を決めた。だがその二人のところにだ。
居川と田仲が通った。二人を同時に睨む。しかしだった。
希望も千春も二人は無視した。最初から眼中になかった。それで終わりだった。
だがその二人はそんな希望達を見てだ。自分達の席に着いてから忌々しげに話すのだった。
「何だよ、あいつ」
「あの娘もな」
「如何にも幸せ満喫って感じでな」
「楽しそうにしやがって」
「ついこの前まであの眼鏡以外には友達もいなくてな」
「馬鹿で運動神経ゼロだったのにな」
とりわけ希望のことをだ。話す二人だった。
「それが彼女できてからかよ」
「あんなになるなんてな」
「何かおかしいよな」
「絶対におかしいぜ」
田仲はその忌々しげな声で居川に答えた。
「何か家も出て学校からすぐ傍の親戚の人の家に引越したらしいしな」
「で、そこでも幸せに過ごしてるんだよな」
「みたいだな。いい親戚らしいし」
「俺の親なんてあれだよ」
居川はこう田仲に返す。
「もう口を開けば勉強勉強でな」
「俺もだよ。小言ばかりだよ」
「それであいつは幸せ全開かよ」
「学校でも家でもずっと幸せ」
「あの馬鹿がな」
「世の中不公平だよな」
こんな話をする二人だった。しかしだ。
クラスメイトの一人がその二人のところに来てだ。こう言ってきた。
「多分な。御前等な」
「?何だよ」
「俺達がどうしたってんだよ」
「そういう性根だからそうした状況になるんだよ」
二人の
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