ガンナーのマスター
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ね飛ぶ。すると、ホットココアの一部がチノの手に付着したのだ。
「だ、大丈夫チノちゃん!?」
「は、はい。それよりこれ……持って行ってください」
「う、うん」
新しい容器にココアを入れ直し、鈴音たちに持っていく。
礼を言った鈴音は、そのままココアを口に付けた。
「はい、リゲルちゃんも」
「……ええ」
リゲルは諦めたような表情でコップを受け取った。
だが彼女はそれを口にする前に、可奈美へ目線を投げた。
「貴女とウィザードは、いつもここで働いているの?」
「住み込みでね。聖杯戦争とかがよくあるから、結構抜け出してるけど」
「そう……」
リゲルはそのまま、ココアを一気に飲み干す。
「マスター。ここでそんなに時間を無駄にする必要はないわ。早く帰るわよ。セイヴァーのマスター。お会計……」
まだココアを味わっている鈴音を無視して、リゲルが訴える。
だが、丁度その時を見計らっていたかのように、呼び鈴が鳴った。
「あ、ごめんリゲルちゃん。ちょっと待って。いらっしゃいませ!」
中腰体勢のままのリゲルに背を向けて、可奈美は新しい来客へ応対した。
そして。
顔が凍り付く。
「え?」
真っ先に可奈美の目に飛び込んできたのは、サングラス。マスクをつけた表情を覆い隠すそれは、不審者という印象を可奈美に叩き込むには十分だった。
足元にはキャリーバックがあり、旅行者なのだと思われる。もっとも、内容物によっては運び屋という名称にもなりうる。
「お、お好きな席へどうぞ……」
可奈美は目を白黒させながら、案内する。
不審者は店内を見渡しながら、静かに動じる。そのまま四人が見守る中、不審者は窓際の席に付いた。
「……可奈美さん」
鈴音は頭を抱えながら言う。
「今回の話の答えは、また後日でいいです。それより、あれ」
「う、うん」
「え、ちょっと。だからもういいから会計……」
リゲルの言葉は聞こえず、可奈美は不審者のもとへ向かう。
背後から鈴音とリゲルの視線を浴びながら、可奈美は不審者へ話しかけた。
「あの、ご注文は?」
不審者はしばらくメニューを見下ろしていた。やがて「うーん」と声を上げ、
「じゃあ、オリジナルブレンドと、ココア特製厚切りトーストを」
「かしこまりました!」
可奈美は、いそいそと厨房へ戻る。チノも相槌を打って、厨房にストックしてある注文のトーストを取りに向かった。
すぐにトーストを持ってきたチノへ、可奈美は小声で耳打ちをする。
「中々珍しい服装ですね……」
「今寒いからね。風邪かな?」
「芸能人とか花粉症とかもありえるじゃろ」
チノの声ではない声も聞こえてきた。
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