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同盟上院議事録〜あるいは自由惑星同盟構成国民達の戦争〜
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦
【著名な戦闘】ヴァンフリート4=2防衛戦(6)~タバル・ヒルの戦い(前)〜
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ーネブルクも首肯する。

 どうであれ彼ら“は”真っ当な軍人であった。







「我が領自慢の重火力隊の出番ぞ、ゴルツの奴め、せいぜい暇を持て余すがよかろう」
 ラサン男爵領軍(臨時陸戦隊)はもしもの為に、と詰んでいた一世代前の重火力砲を装備した800名の連隊(公称)を

「ラサン軍の重火力陣地の”監督”だと?監督とはなんだ、馬鹿にしおって!!」
 ゴルツ男爵はゴルツ元帥記念雷撃艦隊から抽出した1200名の擲弾兵連隊(公称)を
 この二つの連隊(公称)の指揮官はまったくもって仲がよろしくない。ゴールデンバウム朝の矛盾した考えの衝突に他ならない。
 即ち、歴史と伝統の権化であるルドルフ大帝以来の男爵と名君、コルネリアス親征帝に取り立てられ将官の座、男爵位、更に元帥杖(※60数本の)までも手にいれた男爵家。
 実力主義と伝統、二つの権威は常に衝突する――この二人は双方とも辺境の貴族であるのだがそれ故に縋る力は強いのだ――

 そしてその姿は高精度光学望遠鏡により捉えられ、偵察班は擬装が施された洞穴へと帰還した。



「罠じゃあないんですかね、これ」
 クレーベル中佐は敵陣の偵察報告を受けて苦笑いをした。
 
 伸びきった隊列、ダラダラと進む前衛と間が詰まった中衛、そのくせ後衛は中衛を支援するには
「罠があるとわかって罠を張る、読みあいを仕掛けていると?」
 第二旅の増強部隊である独立歩兵大隊”武徳”大隊長は鋭く尋ねる。
 彼は臨時で側道であるキルジ・パスの防衛隊としてクレーベル中佐の指揮下に入っている。

「様子を見ていけそうでしたら」
 クレーベル中佐はにこり、と笑った。
「アスターテ海兵コマンドの精華をお見せしましょう」




 銃撃、砲撃、隘路を進む帝国兵はそれをよけることもできず、悲鳴を上げて後退する。
 ”武徳”大隊は総計600名程度であるが大隊重火力を保有している。とはいえけして楽な戦ではない筈だ。
 頭数だけなら向こうがやや優位である。
「急増陣地でよくもまぁ‥‥」
 クレーベル中佐は感心したが、”武徳”の将兵の努力の身で持ちこたえているのではない事も理解している。
「罠の可能性は低い、か?」
 帝国軍の動きは軍事的常識から逸脱しており、であれば政治的事情であろうか、とクレーベルはどうでもよい考えを弄んでいる。

 正解であった。
 ラサン重火力隊はさっさと援護しろ、とゴルツ男爵が怒り狂えば、貴様らの兵が弱いからこうなっているのだ、我が隊の役目は主力の援護であり対処するのは護衛の役目だ、我が隊に損害が出たら貴様の責任だぞ、とラサン男爵が怒鳴り返す。
 
 “互いに連携すればいいじゃないか”と素直に思った方もおられよう。

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