第一章
[2]次話
障害に勝つ猫達
カナダのニューファンドランド=ラブラドール州の路上に左の前足と尻尾の先がない猫が見付かった、上は黄色がかった茶色で下は白の雄猫だった。施設が保護をして里親を募集することになったが。
施設のスタッフ達は彼を見つつ心配して話した。
「保護したけれど」
「障害がありますから」
「足と尻尾の先がないですから」
「どうしても」
障害があると、というのだ。
「里親にって人少ないんですよね」
「犬も猫も」
「それが現実ですからね」
「障害がある子は避けられます」
「どうしても」
その猫を見ながら里親は望み薄だと悲観していた、だが。
その彼を是非にと言う者が出て来た、そのニューファンドランド=ラブラドール州在住のオルコットという初老の夫婦だった。
夫婦はもう子供達も独立して二人暮らしだった、その彼等が言うのだった。夫のジョナサンはダークブラウンの髪に白いものが混ざっている青の目の長身の男性で妻のエレナはブロンドがまだ美しく緑の目の楚々とした外見の女性だった。
二人はスタッフの人達にこう言った。
「私は実は右足が悪いです」
「私は左手が満足に動きません」
「二人共障害者です」
「ですから障害には偏見がないつもりです」
「むしろ出来るならです」
「障害がある子を引き取りたいと思いまして」
それでというのだ。
「この度参りました」
「その片足の子を引き取らせてくれますか」
「そう言って頂けるなら」
施設の所長も渡りの船で応えた、事実里親が名乗り出てくれることに悲観的だったので嬉しかったのだ。
「宜しくお願いします」
「はい、ではです」
「引き取らせて頂きます」
夫婦は手続きの後でその猫を引き取った、そうして。
猫をバビーと名付けた、バビーは人懐っこく優しい性格で既に家にいた黒とダークグレーの雄猫であるセゾンともだった。
すぐに仲良くなった、確かにバビーは片足で尻尾の先もないが。
「普通の子だな」
「そうよね」
「ニャン」
「ニャンニャン」
夫婦は家の中でセゾンと仲良く遊ぶバビーを見つつ目を細めさせて話した。
「何処も変わらない」
「普通の猫だよ」
「確かに片足はないわ」
妻はこのことは事実だといった。
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