暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
第二章『銀の海の狂人技師』
episode18『人形狂いのプロローグ』
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って家族たちは大切で、無くしたくない繋がりだった。一度失いかけてようやく、自分がどれほど皆の事が大好きだったのかを知った。

 完全に消えてなくなる訳じゃない、失われる訳じゃない。

 それでもやっぱり、怖かった。

「――っと、すいま……」

「あ”ァ?」

 悩み事をしながら歩いていると、不意に肩に軽い衝撃がぶつかってきた。自分でも少々ふらふらと歩いていた自覚があったので謝ろうとすると、それより先に不機嫌そうなドスの利いた声が耳に届く。

 頭頂部辺りから黒い髪が生え変わりつつある、半端な金髪が特徴的な少年だった。

 背はシンと同程度、といってもシンの背丈はこの齢にしてはかなり高い170超えなので、必然的に彼も170かその辺りだろう。
 薄手のシャツの下からでも分かるほどに鍛えられた肉体が目立つが、それ以上にとにかくその人相が悪い。深い焦げ茶色の瞳が金髪の下から、ギンっと擬音でも出していそうなくらいにシンを睨みつけている。

 ぶつかったのがそれほど気に障ってしまったのか、と改めて謝ろうとするが、先に口を開いたのは彼の方だった。

「……お前、何モンだ」

「え。あ……いや、何者って言われても」

「お前にぶつかったぐれぇから、オレのイメージが阻害されてんだ。何しやがった」

 言われて彼の姿を再び見直せば、その右手に野球ボール程度のサイズの魔鉄の塊が握られていた。それはどうにも、歪に歪んではいるがよく見れば鳥の形を象っているように見えなくもない。
 彼はチッと舌打ちをすると、シンから一歩距離を取った。同時に彼の手に収まった魔鉄の形が、精巧な文鳥の姿を取る。

「……鳥?」

「今はな。オイ、あんなブラブラ歩いてたんだ、暇なんだろ。付き合え」

「へ、付き合えって……」

「ジョギングだ。ジャスト今この距離、オレと歩幅二歩分くらいの距離を維持しながら走れ。それと10秒に一回、なんだっていい。手に持てるくらいの生き物でも物体でも、何でもいいから名前を出せ」

「ま、待ってくれ。いったい何の話を」

「行くぞ」

 シンの言い分などお構いなしに駆け出していく少年に困惑しながらも、ひとまず後に続く。彼の言うとおりに約歩幅二歩分の距離を開けて後に続き、そしてその隣に並んだ。

「えー……と、“携帯ゲーム”。で、僕は何をさせられてるのさ、これは」

「言ったろ、ジョギングだ。こっちに関しちゃ、見てりゃ分かる」

「見てりゃわかるって……“コマ”」

 走りながらそうして話していると、規則的に腕を振っている左腕に比べて、彼の右腕だけ振りが遅いことに気付く。そういえば魔鉄製の鳥の模型を持っていたな、と思ってその手を見てみれば、随分と想像からは離れていた。

 その手に
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