第二章『銀の海の狂人技師』
episode18『人形狂いのプロローグ』
[3/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
「……まぁ、取り繕ってもしょうがないね。言ってしまえばそういう事だよ」
無論戦うばかりが製鉄師ではないが、国防、統治の関係上どうしても戦闘を担う製鉄師というものは必要になってくる。あの炎の魔人、スルトル・ギガンツ・ムスペルのような海外からの刺客も存在すれば、国内でも鉄脈術を用いた犯罪というものは一定数存在する。
それを鎮圧できるのも、当然製鉄師しか居ない。基本的に製鉄師という存在はどれだけ抱えても困らないのだ、皇国は常に新たな製鉄師の手を求めている。
故にこそ、聖憐学園を含む、俗にいう“聖学園”……日本各地の製鉄師養成学園が存在しているのだ。
「皇国が大変なのは、分かってるつもりです。でも僕は、家族を守れればそれでいい……自分から危険なところに進んで、ヒナミを危険に晒す事はしたくない」
「……君なら、そう言うんじゃないかとはおじさんも思ってたよ。実際、以前のような一件もある――以前の暗黒時代に比べれば激減したとはいえ、殉職の報告もいくらか上がっている職業なのは事実だ」
暗黒時代……ラバルナ帝国の崩壊を発端とした世界を巻き込んだ混乱期、ブラッド・カタストロフと呼ばれるそれは、この日本皇国にも深い傷跡を残した。
新たな支配を目論む世界の刺客から日本を守るべく戦った製鉄師達、通称“第〇世代”と呼ばれる非公式の製鉄師集団。彼らの殉職率は驚異の10%から20%――10人に1人か2人は死んでいる計算だ。
そのころに比べれば、それは勿論劇的に殉職率は下がっただろう。だが存在はする、あの日の夜に教会の警護に当たり、スルトルに消された彼らがそうだ。
国防の製鉄師になるとはつまりそういう事だ、死と隣り合わせの戦場に自ら足を踏み入れるという事。そして製鉄師である以上、そこには相方である魔女――シンの場合はヒナミも、そこに連れていくことになってしまう。
「君は、あの日あの場に居た製鉄師を覚えているかな」
「あの場に居た――スルトル……じゃなくて?」
「そう、もう一組の製鉄師があそこにはいた筈だ。君はそれどころじゃなかったかもだから、正直覚えていなくても不思議じゃないけれどね」
言われてみれば確かに、スルトルとは別に見知らぬ顔があったような覚えがある。いつの間にか姿が見えなくなっていたのですっかり忘れていたが、別の何者かがあの場に居たことは間違いない。
だが、結局スルトルを倒した後に彼らは姿を見せなかった。逃げたのだろうか。
「うん、まぁ結論を言えば逃げたそうだ。周辺一帯から忽然と気配が消えてた事から、仲間に瞬間転移関係の鉄脈術持ちが居るんじゃないかって話でね。何にせよ、君の乱入の後、早々に立ち去ったのは間違いない」
「……ええと、そ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ