第二章
[8]前話
動物園におるハイガシラオオコウモリの雄のジッタを紹介された。見ればジッタは。
「キキッ」
「随分人懐っこい子ですね」
「赤ちゃんの時に保護されまして」
蝙蝠の飼育員がルーレンスに話した。
「それでです」
「大人になってもですね」
「ずっと人と一緒にいたので人馴れがしていて」
そしてというのだ。
「撫でられたり優しくされたがる」
「甘えん坊ですね」
「そうです、ですが一度野生に戻す予定でした」
飼育員はこのことも話した。
「ですが怪我をして」
「そうですか、私の場合は」
「なかったですか」
「怪我をしたら怪我が回復してからです」
「帰していましたか」
「そうしていましたが」
「この子はその機会を失ったので」
それでというのだ。
「今もこちらにいます」
「そうなのですね」
「それでいいでしょうか」
「野生の子は野生に戻すことがいいでしょうが」
それが一番だとだ、ルーレンスは飼育員に答えた。
「ですが決してです」
「間違ってはいないですか」
「そうかと。それが縁なら」
「動物園で、ですね」
「育ててもいいかと。こんなに人馴れしていますし」
飼育員の傍を楽しそうに飛ぶジッタを見つつ話した。
「それなら」
「そうですか、では」
「そうされることもいいです」
「わかりました」
飼育員はルーレンスの言葉に頷いた、そしてだった。
ルーレンスも飼育員に笑顔で応えた、そのうえでヨハネスブルクに帰ってそうしてだった。
また蝙蝠を育てる仕事に戻った、どの蝙蝠も公平に落ち着いて育てて野生に戻す、その時にいつも言った。
「蝙蝠がいてこそ私達は助かるから」
「虫を食べてくれるからですね」
「そう、だからね」
それでとスタッフに話した。
「これからもね」
「蝙蝠を助けていきますね」
「そうするわ、これもまた生態系を守ることよ」
自然を守ることと言うのだ、そしてその中にある人間の生活も。
こう言ってまた蝙蝠を保護し育て野生に戻していった、助けられた蝙蝠達は毎夜飛びそのうえで虫達を食べていく、ルーレンスはこのことに笑顔になるのだった。
蝙蝠博士 完
2021・6・23
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