第十四話 新しい道その二
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「飲んでいると心が楽しくなるよ」
「楽しい時に飲めばさらにですね」
「うん、なるよね」
「お酒はそうしたものですね」
「ずっとね。憂さ晴らしだったよ」
彼の酒の飲み方はだ。それまではそうだったというのだ。
「お酒を飲むのは」
「憂さですか」
「お酒はその為に飲むものじゃないんだ」
希望はこのこともわかってきていた。酒のこともだ。
「楽しむ為に飲むものだからね」
「憂さ晴らしの為のお酒は」
「まずいよ」
希望は過去に飲んでいた酒のことを思い出して苦い顔になった。いや、苦いのではなく寂しい顔になっていた。そうした顔での言葉だった。
「今思うとね」
「そうですね。僕もそうしたお酒を飲んだことがありますが」
「友井君もなんだ」
「父のことで」
真人もだ。ここで寂しい顔を見せた。
「そうなりました」
「そうだったんだね。かつては」
「ビールだけでなくウイスキーも飲みました」
「ウイスキーを?」
「アルコール度が強いので」
まさに酔って忘れる、その為にだったというのだ。
「そうしました」
「そんな酒美味しくなかったよね」
「お陰でウイスキーを飲めなくなりました」
そうなったとだ。真人は寂しい笑顔で俯いて述べた。ミルクティーが入ったそのコップを右手に持ちだ。その姿勢で言ったのである。
「それ以来」
「そうだったんだ」
「だからこそ。憂さ晴らしのお酒はです」
「飲まないんだね」
「はい、遠井君と同じです」
こう希望に答える。
「それは」
「そうだね。だから今度はね」
「楽しく飲みましょう」
「これからそうするよ」
また言う希望だった。
「お酒もね」
「そうですね。ただです」
「ただ?」
「お酒は楽しいものですが」
それでもだというのだ。
「飲み過ぎるとです」
「二日酔いかな」
「それに加えて身体にもよくないです」
「ああ、日本酒だと糖尿病だね」
日本酒派の立場からだ。希望は言った。
「それがあったね」
「ビールだと痛風です」
真人はビール派の立場から言う。
「僕はまだなったことがないですが」
「いや、なったら大変だよ」
「あれはかなり痛いそうですね」
「そうらしいね。苦しいらしいね」
「足の親指の付け根が急に痛くなり」
痛風の前兆である。ここからはじまるのだ。
「歩けなくなる程だとか」
「風が吹いただけで痛くて」
「本当に大変らしいね」
「ドイツで多いと聞いています」
そのビールをよく飲むだ。ドイツでというのだ。
「何しろビールにソーセージですから」
「うん、その組み合わせはまずいよね」
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