第二章
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コビーはこの時家の仕事でノースカロライナ州西部アッシュビルにいた。そして知り合いの家出牧場を代々経営しているアダムとエミリー、ハッシュ家の夫婦の家を訪問していた。
そして一匹の大きな茶色の牛を前にして夫婦に話した。
「大きくなりましたね」
「うん、お陰でね」
「ここまでなったわ」
黒髪に黒い顎髭に黒い目の大男の夫と金髪碧眼で肉付きのいいやや小柄の妻も応えた、その後ろw見ながら。見ればハイランド種で雄である。
「やっぱり何かとあるけれどね」
「それでもだよ」
「モォ〜〜〜」
自分と同じ種類の二匹の牛と一緒にいる、彼等は実に仲のいい感じで寄り添い合っている。まるで兄弟の様だ。
「リチャードともヘンリーとも仲がいいし」
「いつも一緒でね」
「モォ〜〜〜」
「モォ〜〜〜」
その二匹も鳴いて応えた、そして。
夫婦はその犬を見てさらに言った。
「この子、ジェームスはね」
「産まれた時大き過ぎて頭に酸素がよくいかなかったらしくてね」
「障害があるし」
「去勢の時お臍が塞がっていないことがわかって感染症もわかって」
「何かと大変だったよ」
「獣医さんにも安楽死を言われたし」
「それにですね」
コビーは夫婦に応えながら牧場の中の牛達を見た、見れば。
どの牛も三匹に近寄ろうとしない、その群れを見て言うのだった。
「障害があるから親も群れも見捨てましたし」
「もうすぐに死ぬと思って」
「それでね」
「そうですね、ですがお二人は助けて」
育ててというのだ、見捨てないで。
「親のいないリチャードとヘンリーとも会わせて」
「幸い三匹共仲がよくなったしね」
「いつも一緒にいてもらうよ」
「感染症も治りましたし」
去勢の時見付かったそれもというのだ。
「これからもですね」
「うん、二匹一緒にね」
「ずっとここで暮らしていくわ」
「そうですね、障害があっても生きていって」
コビーはジェームスの頬を撫でつつ夫婦に応えた。
「辛い過去があっても」
「それでもだね」
「生きていくものよ」
「人間もそうですし」
つまり自分達もというのだ。
「そうした子達も頑張って生きていっていますね」
「周りが助けることがあっても」
「そうよね」
「この子もそうでカレブもですね」
今も家にいる彼のことも思った。
「それならですね」
「うん、私達はこの子と一緒にいるし」
「貴女もそうよね」
「これからもカレブと一緒にいます」
カレブのことを知っている二人に笑顔で応えた、見ればジェームスは。
彼女に頬を撫でられ嬉しそうだった、家に帰ってカレブの頬を撫でても同じだった。撫でた時に見た彼等の目はとても優しく穏やかなものだった。
馬も牛も家族 完
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