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ソードアート・オンライン〜アインクラッド・アクセル〜
アインクラッド
〜剣の世界〜 2
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両手をつきうずくまっているユーリーに肩をかし立たせる。その時に見えた彼女の瞳には、生気が一切宿っていなかった。当然、レンヤの問いに答えることも出来ない。
 「・・・・・・取り合えず、ここから移動しよう」
 覚束ない足取りのユーリーと共に、レンヤは広場を後にする。

 ・・・一度だけ振り替えたった広場。自分達同様その輪から離れていくもう一組の内の一人とレンヤは、目があった気がした。


                     §


 《はじまりの街》中央広場から少し離れたところにある宿屋。そこの二階にある一室に、レンヤは訪れていた。
 その部屋の窓からは、ちょうど広場を全貌でき、彼はそこからの光景を眺めている。
 ・・・あの場を離れてから大した時間は経っていないので当たり前と言えるが、広場の混乱は未だ止みそうにない。それどころか、混乱の様相は更に強まり、あらゆる負の感情が、窓を閉め切っていても聞こえそうなほどに高まっている。
 「・・・・・・早まった事をしなければいいんだがな」
 “早まった事”が具体的に何を指すのか、言ったレンヤ自身もわかってはいないが、間違いなく場の混乱と絶望を高める結果になるであろう事は想像に難くない。
 「・・・少しは落ち着いたか?」
 しばらくは広場の状況に良い変化は訪れないだろうと視線をはずし、この部屋のもう一人の住人を呼びかける。
 「・・・・・・・・・・・・」
 しかし相対する住人は、未だにその口を開こうとしない。
 彼が寄りかかっている窓際から一メートル半は離れたところに置いてあるベッドの上で両足を抱え蹲ってる。この部屋を訪れ、とりあえず気持ちを落ち着かせるようレンヤに促されて以来、彼女はその体勢のまま微動だにしていない。・・・とはいえ、広場の者達のように暴れ出さないだけ幾分ましといえよう。
 「・・・・・・まぁ、なかなか落ち着くようなもんじゃないよな」
 寄り掛かっていた窓際から背を離すと、ベッドの上で蹲る彼女に幾分近づき告げる。
 「・・・・・・・・・俺は、これからこの街を出るつもりだ」
 その言葉に、彼女はゆっくりと顔を上げレンヤを見つめた。
 この街を出る―――即ちフィールドに出る。この世界においてそれは、死地に自らの意思で乗り込む事と同義だ。この世界の“死”が現実での“死”に直結するこの状況で、フィールドに出ることの意味。先ほどの茅場晶彦による《正式サービスのチュートリアル》によってまともな思考回路を持ち合わせていない彼女にはそれが理解できていなかった。
 生気を失っていながら、その疑問を瞳に内包していた彼女の視線の意味を察知し、彼は答える。
 「おそらく、茅場晶彦の言っていた事は本当なんだろう。このゲームをクリアしなきゃ現実の世界には戻れないし、ここで死ねば、
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