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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
Dive to Sword Art Online the World
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うに、上手く足や手を加速させることが出来れば、技の威力や速さがブーストされる。……俺は習得に10日くらい掛かったんだけど、マサキはそれを一瞬でやってたんだ」

 今度はマサキが驚く番だった。確かにシステムに逆らわないように手足を速く動かそうと意識はしていたが、まさかそれがそんな大層な技だったとは。

「いや、ただの偶然だよ」

 マサキは答えるが、キリトはなおも疑惑の視線を向けてくる。……もしかして自分のことをβテスターだとでも思っているのだろうか? とマサキは考えるが、それを証明する手立てが無いために頭から思考を追い出す。二人の間に沈黙が生まれ、少し気まずい空気になりかけたのだが、それをクラインがものの見事に打ち破った。

「ああ! もうこんな時間じゃねーか!! 悪い、俺、そろそろ落ちるわ。マジサンキューな、キリト。マサキも、楽しかったぜ。二人とも、これからよろしく頼む」

 クラインが両手をぐいっと突き出し、マサキが左手を、キリトが右手をそれぞれ握る。

「こちらこそ。また分からないことがあったら、何でも訊いてくれ」
「ああ。同じ初心者として、これから仲良くやっていこう」

 実際には、マサキにこれ以降他人と行動を共にする気は全く無かったのだが、社交辞令として爽やかな笑みと共に告げる。クラインはもう一度ニッと笑うと、手を離し、数歩後ずさってからウインドウを呼び出し、ログアウトした……はずだった。


 茅場の創り出した世界を一日観光し、なかなかに楽しんでいたマサキだったが、実のところ、少し拍子抜けしていた。確かにこの世界はすごいとマサキも思う。だが、コレはあくまで虚構だ。そして、恐らく後数年もすれば他の誰かも同じようなものを開発しただろう。そして、茅場があれほどまでに渇望していたものがこの程度だとは、マサキは思えなかった。
 ――まだ、この世界には何かとてつもない“裏”がある。
 そう考えていたのだ。だが、それを確かめることが出来るはずもなく、そろそろ自分もログアウトしようとウインドウを呼び出したところで――。

「……あれ? ログアウトボタンがねぇぞ?」

 クラインの素っ頓狂な声が辺りに響き、キリトが眺めていたウインドウから視線を上げる。

「いや、そんなことはないだろ。よく見てみろ」

 その声にクラインはもう一度、今度は顔をウインドウにくっつけて確認するが、やがて首を振った。

「……駄目だ。やっぱ何処にもねぇ」
「俺もだ」

 ここで、今まで様子を伺っていたマサキが突然会話に割り込んできた。マサキがこんな冗談を言うとは思えなかったキリトが、ようやくここで確認していたアイテムストレージを閉じてログアウトボタンを探し始め――、
 そこで固まった。

「……ねぇだろ?」
「うん
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