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ソードアート・オンライン 穹色の風
アインクラッド 前編
Dive to Sword Art Online the World
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、ああ。実は、もっと上の階層になると、刀スキルを使うMobが出現するんだ。だから、βテスターの間で何かの条件を満たすとそういうスキルが使えるようになるって噂もあった。」
「その条件ってのは?」

 今度はマサキが尋ねる。

「それが……まだ分からない。それに、そもそもこの噂自体がただの憶測に過ぎないんだ。刀が使えるのかさえ分からない。……ただ、スキルは熟練度によって派生するから、形の似た曲刀を使っていれば、あるいは……」
「曲刀だな!? 曲刀を使っていればいいんだな!?」
「いや、だからあくまでただの噂だから……って近い、近いってば」

 これが現実なら速攻で警察を呼ばれるであろう勢いで迫るクラインを必死に抑えながらのキリトの説明を聞きながら、なかなかに奥が深いものなのだなァ、とマサキは純粋に感心していた。そしてもう一度店内を見回し、曲刀の棚に置かれていたシンプルな柳葉刀を手に取り、数回振ってみる。シンプルなだけあって使いやすく、値段も手ごろだ。そのまま手に持って眺めていると、

「それ、値段の割りに性能がいいから、結構使えるよ」

 というキリトの解説が割り込んできた。そしてそれを聞いたマサキはもう一度素振りをすると、タップでウインドウを開き、《購入》ボタンを押した。すぐさま不自然なほどにこやかなNPCが飛んできて、価格を告げ、最終確認のウインドウを表示させる。マサキは特に迷うことも無く《YES》をタップし、そのまま装備する。解説の礼を言おうとキリトを探すと、彼は店先で初期装備の剣を携えたまままま立っていた。

「キリトは、ここで買わないの?」
「ああ。俺は片手直剣使い(ソードマン)だからね。武器は初期装備でいいんだ。防具は多少いじったけど」

 それを聞いたマサキは、もう一度キリトの装備を確認する。すると確かに、胸当てなど一部の防具が少しグレードアップされていた。

「じゃあ、俺も防具を買ったほうがいいのか?」
「いや、それ買ったらもうあんまり手持ちも無いだろうし、最初は雑魚モンスターを相手にするだけだから、初期装備でも十分戦えるよ」

 ようやく硬さがなくなってきたキリトの解説を聞きながら、マサキは最初に彼を見つけられた自分の運に感謝した。やはり何処の世界でも経験というものは大事だ。

 それから二人がしばらくの間装備品談議に花を咲かせていると、クラインが海賊刀(カトラス)を腰に下げてほくほく顔で帰ってきた。

「悪い、待たせちまったな!!」
「いや、大丈夫だ。……で、この後はどうすればいいんだ?」
「ああ、取りあえずフィールドに出て戦闘に慣れよう。いこう、こっちだ」

 マサキとクラインは揃って頷くと、歩き出したキリトを追った。


「ぐはっ!!」
 青イノシシ――正式名《フレンジ
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