第3節「奇跡の殺戮者」
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の炎でイザークの穢れを清めよッ!』
役人達の怒声が、村人達の怒号が耳朶を打つ。
皆が一様にして悪意を向けているのは他でもない、彼女にとってたった一人の家族。最愛の父親だ。
『パパッ!パパッ!パパッ!!』
役人に押さえられ、遠ざけられながら少女は泣き叫ぶ。
魔女狩りを掲げる使徒達の手により、火刑に処される父の姿に、少女は泣き叫びながら手を伸ばす。
虚しく空を掴む小さな手。
それがなお、少女にじわじわと絶望を刻み込んでいく。
だが、父親はとても穏やかな笑顔で、たった一人の愛娘を見つめ口を開く。
『キャロル……生きて、もっと世界を識るんだ』
『……世界を?』
『それがキャロルの───』
「パパ……。……消えてしまえばいい思い出」
忌々しげに吐き捨てる金髪の少女。しかし、その両目には涙が浮かんでいた。
「そんな所にいたら危ないよッ!」
「……ッ!?」
突然声をかけられ、驚く少女。
声の主を探して視線を落とすと、こちらを見上げる茶髪の少女……立花響が立っていた。
「パパとママとはぐれちゃったのかなッ!?そこは危ないから、お姉ちゃんが行くまで待ってて──」
「──黙れッ!」
慌てて涙を拭うと、少女は右手で円を描く。
瞬間、翡翠色の六角形を集めた幾何学模様の円陣が宙に浮かび、その中心部より竜巻が放たれる。
「うわあああッ!?え、ええ……?」
慌てて飛び退く響。
先程まで自分が立っていた場所を見ると、その場所だけ地面が渦状に抉れていた。
突然の超常現象に困惑する響。
そこへ、インカムからクリスの切羽詰まった声が轟いた。
『敵だッ!敵の襲撃だッ!そっちはどうなってるッ!?』
「敵──?」
改めて、響は少女を見上げる。
翔は既に気付いていたが、渡り廊下の手すりに仁王立ちしている少女の姿は、明らかにただの子供とは思えない服装だ。
否。一般人ではない、どころではない。
何処を歩いても目立つのは確実な時代にそぐわぬ服装で、こんな遅い時間帯から出歩き、あろう事か消火活動中の火災現場のど真ん中に侵入する子供など、居るはずもないのである。
それにようやく思い当たった時、響はようやく理解した。
目の前にいるこの少女こそが、この火事の元凶である事を。
「……キャロル・マールス・ディーンハイムの錬金術が、世界を壊し……『万象黙示録』を完成させる」
キャロルと名乗った少女は右手を天に掲げ、今度は四つ、翡翠の円陣を重ねる。
「世界を……壊す?」
「俺が奇跡を殺すと言っているッ!」
右手を響の方へと向け、狙いを定める。
そして最後に、空いた左手で発生させた紋様……『風』を示す記号を組み込み、完
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