第3節「奇跡の殺戮者」
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、響はその影のシルエットなど気にも留めていないようで、そのまま真っ直ぐ向かって行ってしまう。
「あの格好どう見ても怪しいだろ!?」
こちらの声も耳に届かず突っ走っていく響を追って、翔もまた走り出した。
邂逅の時は、すぐそこまで来ていた。
ff
「ふッ!はあーーーッ!」
「……フフ」
交わされる剣戟が廊下に反響し、ぶつかり合う刃は火花を散らす。
緑の女は余裕の笑みを崩さぬままに、翼と互角の剣技で渡り合っていた。
(この女、何者かは分からないが──強いッ!)
「どうしました?まだ私は満足しておりませんわ。もっと唄ってくださいまし……フフ」
「何が目的かは知らないが、聴きたいというなら存分に聴かせてやろう──戦場に舞う防人の歌をッ!」
翼はもう一本の剣を振り抜き、二刀流で押し切る戦法に出る。
再び、剣と剣が打ち合う音が鳴り渡る。
翼の二刀を一本の剣で容易くいなし、受け止めながら斬り込む女。
だが、翼もその度に二刀を素早く振るい、一切隙を見せずに立ち回る。
やがて翼の一刀が届き、女は体勢を崩す。
その隙を逃さず、続くもう一刀を翼は素早く振り下ろす。
だが、それを躱すべく女は跳躍する。
──これこそが翼の真の狙いであった。
「──勝機ッ!」
二本の剣を柄で繋げ、蒼き焔を纏ったそれらを回転させながら、展開した両脚のブレードによる推力で滑走する。
「風鳴る刃……輪を結び、火翼を以て、斬り候──月よ煌めけッ!」
〈風輪火斬・月煌〉
翼の技を受けて吹っ飛んだ緑の女は積まれた機材へと激突し、煙が上がる。
狭い廊下で大技を放ったため、周辺の機材や搬入物は全て倒れ、壁や柱の一部は切断されていた。
緑の女は確実に生き埋めになっている。
「やりすぎだッ!人を相手に──」
咎めるマリア。
しかし、翼とツェルトの表情は険しかった。
「やりすぎなものか。……手合わせして分かった」
「マリィ、こいつは人じゃない……」
「……あッ!?」
次の瞬間、積み重なった機材を全て吹き飛ばされる。
「こいつは、どうしようもなく……、──バケモノだッ!」
まるで、何事も無かったかのように無傷な緑の女は、両目を再び爛々と光らせ、翼の方へと向かい合った。
「フフ……聞いていたより、ずっとショボイ歌ね。確かにこんなのじゃ、やられてあげる訳にはいきませんわ」
ff
「……………………」
メラメラと音を立て、赤々と燃え盛る炎を前に、少女は夢想する。
全てを失い、全てが始まったあの日の事を。
(……パパ)
『それが神の奇跡でないのなら、人の身に過ぎた、悪魔の知恵だッ!』
『裁きをッ!浄罪
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