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おぢばにおかえり
第六十四話 阿波野君と先輩その三十二

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「人間軽蔑って言われたら相当堪えますよ」
「そうした言葉なのね」
「神殿で階段の上から言われて周りから冷笑ですよね」
「先輩が言われていたわね」
「しかも軽蔑って言葉を待ち伏せしてあえて集団で聞こえる様に陰口を言うとか」
 そうしたこともというのです。
「自分に絶対の正義があると思ってしたのなら」
「相当に残酷な人で」
「取り返しがつかないですね」
「だから先輩とお会いしても」
「はっきり言います、僕の感情は変わらないです」
 相変わらず絶対に、という返事でした。
「そのことは申し上げておきます」
「阿波野君のその全否定ぶりはよくわかったわ」
 嫌いな対象へのそれはです、ものごとに対する見方が全肯定か全否定しかない子だということがです。
「ちょっとやそっとじゃ治らないわね」
「そうした癖性分ですか」
「これはかなりのものね」
 病気なら重症でしょうか。
「本当に」
「子供の頃からそうで」
「今は酷くなってるのね」
「中学一年の時に気付いたんですが」
「なおそうと思わなかったの?」
「思っていました」 
 自分でもというのです。
「最初は。ですが」
「結局なおさなかったの」
「暴力教師見てあと底意地の悪いクラスメイトも見て」
「それでなの」
「もう嫌いな相手はです」
 それこそというのです。
「全否定する様になりました」
「それで好きだとなのね」
「全肯定になりました」
「極端になったのね」
「そうなんですよ」
「人と人の出会い、お引き寄せは大事だけれど」 
 阿波野君の場合はです。
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