第五章 トリスタニアの休日
幕間 待つ女、待たない女
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、自分の身体が傷つくことをかえりみることなく、女性を守った。
女性に向かって化物が襲いかかる度、士郎の身体が傷ついていき。三体を残す頃には、士郎の全身は血で濡れていた。
士郎に守られる女性は、士郎に守られ、そして、その度に士郎が傷つくのを見ると、悲痛な悲鳴を上げていた。
しかし……それでも、士郎は逃げることなく化物の前に立ちふさがった。
そして今、残った三体は、士郎に向かって同時に飛びかかった。
士郎は両手に持つ剣を、連続して向かってくる化物に投げつける。士郎が一瞬で投げつけた剣の数は六。化物の前後に襲いかかるように投げられた剣は、二体の化物の首と胴を切り飛ばしたが、一体は腕を落すのみにとどまった。
「――しまっ」
「ぁ」
剣のような爪が迫るのを、女性は息を呑むような悲鳴を上げた。
眼前に迫る驚異は、女性が驚異を理解する前に、女性の身体を引き裂く、
「え?」
「あ?」
筈だった。
顔面に降りかかった熱いものを、震える手で触れると、それを月光で照らし出す。
それが何か理解した瞬間。
女性とジェシカの口から、絶望の悲鳴が上がった。
「「イヤアアアアアアアアアッッ!!」」
女性の前には、士郎の背中があった。
そして、その背中から、鋭い爪が生えていた。
「あ、ああ、ああああ……いや、いやあ」
「うそ、うそよこんなの……お願い……こんなの……いや……」
目の前の光景を否定するように、女性は震える顔をゆっくりと振っている。
「っオオオッ!!」
血を吐き出しながら士郎が雄叫びを上げると、剣を振るい化物の首を切り飛ばした。
化物の身体が後ろに倒れると同時に、ズルリと士郎の身体から爪が抜け落ち、士郎の身体が女性に向かって倒れだす。
「士郎さんっ!!」
士郎の身体を抱きとめた女性は、士郎のちで濡れるのを構うことなく抱きしめた。士郎の身体から流れ出る血を、自分の身体で押しとどめるように、女性はきつく士郎を抱きしめる。
「士郎さん!!」
女性の必死の呼び声に、士郎はうっすらと瞼を開いた。士郎の目が開くのを見た女性は、ボロボロと大粒の涙を流しながら、士郎を必死に引きずり始めた。
「い、今すぐち、治療を」
「……安心しろ」
漏れ出る嗚咽を堪えるように歯を食いしばる女性の頬に手を伸ばした士郎は、頬を濡らす手を自らの手で拭いながら笑いかけた。
「あ、安心出来るわけないでしょ! こ、こんな血が出て!」
「急所は外している……それに俺は特別でな……暫らくすれば傷はふさがる……だから」
「……だからって……だからって安心できるわけない!!」
「……ああ、すまない……な」
仰向けに草原の上に寝ころがる士
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