第五章 トリスタニアの休日
幕間 待つ女、待たない女
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を閉じ、女性は士郎の大きな背中を見上げた。
「絶対に守ってみせる」
「し、士郎さん」
「だから、安心してそこにいてくれ」
そう言って首を傾け、後ろにいる女性を見ると、士郎は目を細め笑い掛けた。
「……あ」
士郎の浮かべる笑顔に導かれるように、女性の顔にふっと、小さな笑みが浮かぶ。それを確認した士郎は、ゆっくりと向かってくる化物に顔を向け、
「……やるか」
士郎から化物に向かって斬りかかった。
士郎と化物の戦いは一進一退の戦いを繰り返していた。
化物一体一体の戦いは、士郎よりも弱いが、数が余りにも多すぎた。
しかも、士郎の背には戦う術のない女性がいる。士郎は常に後ろの女性を気にかけながら戦っているため、動きに精彩を欠いているようだ。
だが、やはり士郎は強かった。
月が傾くほどの時間が過ぎる頃には、士郎の前に立つ化物の姿は、三体までに減っていた。
しかし、士郎も無事ではなく、全身から自らの血を流している。致命傷になるような傷はないが、それでも全身から血を流していた。肩で息をしながらも、士郎は残り三体の化物を注視している。
……シロウ……何で……?
草原に膝と手を着き、ジェシカは、士郎と化物たちの戦いを見ていた。
士郎と化物たちの戦いは、決して余裕があるようなものではない。何度も士郎は死にかけるような攻撃を受けている。幸い、まともに喰らうことはなかったが、それでも、士郎の命に危険がおちいる度、ジェシカは悲鳴を上げた。
「何で……逃げないの……! シロウ一人なら逃げれるでしょ! なのに……何で……!」
ジェシカだけではない。
士郎に守られている女性も、同じように悲鳴を上げている。
「士郎さん! 逃げてください! あなたが……あなたが死んでしまう!! お願いだから……もうっ……逃げてくださいッ!!」
士郎は強い。
ジェシカが思っていたよりもずっと。
同時に貴族を複数倒すほどの実力を持つ士郎が何者かはわからないが、とてつもなく強いことは知っていた。
だけど……士郎の実力は、それ以上だった。
両手に持つ剣を、まるで自分の手足のように扱う士郎は、戦いについて素人であるジェシカでも、常人とは隔絶したものだとわかるほどのものだった。
十体以上の化物の攻撃を、士郎は余裕はないが、それでも、互角以上に戦況を進めていた。
しかし、士郎の身体には、大小様々な傷がある。
それは、士郎が何かをミスしたわけでなく、化物強さが想像以上のものであることでもなく、
「わた、私なんか守らないで、早く逃げてッ!!」
後ろにいる女性のせいであった。
化物達は士郎だけでなく、時折後ろにいる女性に向かって襲いかかり。その度、士郎は
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