第五章 トリスタニアの休日
幕間 待つ女、待たない女
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上げるように、化物の身体を切り上げた。
大量の水が入った水袋を、勢い良く切り裂いたような音が辺りに響き、黒い雨が草原に降り注いだ。
――ッギャアアアア!!!――
脇腹から肩に向かって大きく切り上げられた化物は、大量の血と臓物を振りまきながら、宙を舞い、騎士の後方に向かって落ちていく。
湿った音と鈍い音が周囲に轟き、
「壊れた幻想」
爆発が起った。
むせ返るような血の匂い。
鼓膜を破かんとする轟音。
身体を叩く爆発の衝撃。
夢だと思う……けど……本当に……夢なの?
呆然と騎士と化物の戦いを見ていたジェシカだが、知らず、化物の血に濡れた騎士に向かって歩き出す自分がいることに気付いた。騎士と化物の戦いは、遠目で見ていたため、騎士の姿形は何となく見えていたが、どんな顔をしているのかは、わからなかった。けれど、ある予感はあった。
近付いてくる騎士に危機感は何故か湧かない。騎士のような格好をしているとはいえ、あんな化物と戦い勝ってしまったほどの相手だ。そんな相手に近づいていっているというのに、何故か怖くはない。
理由は何となく予感はある。
多分……。
「……やっぱり」
化物の血で染まった顔を、剣を持った手の甲で拭くと、騎士は空を見上げ小さく息を吐いた。
「……ふう」
空を仰ぐことで騎士の顔が、月の光に照らし出される。
「……シロウ」
月光により浮かび上がった騎士。
それは、白い髪と鷹の様な鋭い鋼色の瞳を持ち。
黒い肌を黒い甲冑と赤い外套に身を包んだ……。
衛宮士郎がそこにいた。
「シロウ……さっきのは……」
ジェシカが恐る恐ると声を掛けながら手を差し伸ばすが、
「えっ!? え? ちょ、どういう、こと?」
手は士郎の身体を突き抜けてしまい、驚いて反射的に手を引くと、足を滑らせ濡れた草の上に転げてしまう。何が起こっているのか分からず、ジェシカが戸惑いの声を上げていると、自分ではない女の声が上がった。
「あ、あの! だ、大丈夫ですか!」
唐突に聞こえた女の声に驚き、ジェシカが声が聞こえてきた方向に顔を向けると、息を切らしながら走ってくる人影が微かに見えた。時折声を上げながら士郎に向かって走ってくるその影が視界に入ると、ジェシカは思わず
「シエ、スタ?」
愕然とした声を漏らした。
こちらに向かって近付いてくる女性は、故郷で見たことがある曽祖父が作ったという、上下に分かれていない、奇妙な服を着ている。その容貌は、自分の知る従姉妹によく似ており、ジェシカは思わず驚愕の声を上げてしまった。
「だ、大丈
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