episode17『来年の事を言えば鬼が笑う』
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の方が自然な事なのだ。
――そう、自然な事の、筈なのだ。
「……よか、った」
「……え?」
ぽつりと、ヨシカが漏らしたそんな言葉に虚を突かれたように、シンが裏返った声を零す。だがそんなシンの様子も見えていないのか、彼女は鈍い四肢を懸命に動かしてベッドから降りると、拙い足取りのままによろよろとこちらに近付いて、車椅子のシンに抱き着くように倒れ込んできた。
「よかった、よかったっ……ちゃんと、生きて……!私、あなたに、謝らなきゃいけないって、ずっと……!」
「え、なん、待って、待ってくれ。違うんだ、謝らなきゃいけないのは、僕の方で」
シンがついさっき語っていたような事をそのままそっくりに話す彼女は、本当に安心しきったような様子でぽろぽろと涙をこぼして、車椅子に座ったシンの膝から、ずり落ちるように病室の床へと座り込む。
ヒナミは勿論、シンだって状況を掴めていない。何を言われても仕方ない、罵倒だって甘んじて受ける――そんなつもりで来たというのに、彼女には欠片もそんな様子もなく、むしろシンと同じくらいに切羽詰まった様子で謝罪を繰り返すのだ。どうにも話がかみ合わない。
「契約の日に、貴方の世界を見たの」
「僕の、世界」
逢魔シンの抱える世界――当初は、『自分が鬼に見える世界』だと思われていたソレの実態は、『鬼となった自分を罰し続ける煉獄の世界』だ。彼の世界を垣間見るという事は、彼の居たあの苦痛と絶望に足を踏み入れるという事だ。
ヒナミが、そこに踏み込んだように。
「怖かった、痛かった。それはほんと。もう逃げ出したい、投げ出したい、早くこんなひどい世界から抜け出したいって、もう開放してほしいって、何回も祈ってた」
「――それ、は」
逢魔シンという少年の中で形成された、紛れもない地獄。そこに触れたとき、ヒナミもまた折れそうになったのは確かだ。意志を容易く挫くような苦痛、決意を簡単に折るような悲痛。きっと、何かが少しでも違えばヒナミもヨシカと同じ顛末を辿っていただろう。
それほどにあの世界には痛みが、苦しみが溢れていた。それはヒナミが、そしてシン自身がよく知っている。
「そうやって現実に返ってきても、まだどこもかしこも痛くって、もう助けてって、周りに手を伸ばしてた――未だに、覚えてる」
「……うん、そうだったね」
悲鳴を上げてのたうち、血を吐いて喘ぐ彼女の姿を、シンもまた覚えている。
異常を察知して駆けつけてきた大人たちの隙間から覗く、血と涙で濡れた床板。どよめきの中でもはっきりと響く絶叫。深すぎる損傷によって痙攣しながらも、救いを求めて伸ばされた手。
シンにとっての、云わばトラウマの一つ。かつて犯した罪の象徴ともいえる、苦
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