episode17『来年の事を言えば鬼が笑う』
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象だ。
「もう、あの人はいない。二度と、悲劇は繰り返さない」
“――逢魔シンを極限にまで追い込み、契約を促す。最悪の事態が発生するに至りかけた場合にのみ介入し、これを防ぐ”
“その他許容範囲内であれば、如何なる損失もこれを無視する。極限状態を緩めてはならない、最大限にまで追い込み、契約に縋らせる”
これが、白崎典厩に打てる最善の手だった。
「……智代ちゃんの容体は?」
「魔鉄義足は手配済みよ、慣れればすぐに元通りの生活に戻れるわ。足以外は、さほど大きな怪我もなかったしね」
「そうかい、そりゃよかった。流石に智代ちゃんまで死んじまったら、後であの子らになんて言われるか――」
「学園長」
「――っと」
不意に、背後から声が掛かる。
振り返ればそこに居たのは、片目に刻まれた深い切創と眼帯姿。聖憐学園にて白崎夫妻のサポートを行う、学園長補佐――九条悟だ。
彼女はいつもの朗らかな様子をしまい込んで、至って真面目そうな表情を取り繕っている。彼女がこういう露骨に気を引き締めた様子の時は、決まってその用件は一つ、決まっている。
「来客かい?予想はつくけど、誰だ」
「――黒崎暗音様が、お見えです」
「……女狐め、地獄耳にも限度がある」
ふぅ、とため息を一つ吐いて、雑ではあるが軽く身なりを整える。見知った相手とはいえ、相手は重役……それもとびきりの曲者だ。気を引き締めて掛からねばならない。下手なことを言えば、すぐに首元に喰らいつかれる。
「応接室に通してくれ、おじさんもすぐ向かうよ」
「既にご案内済みです。ただ、黒崎様からは『今日はのんびりは無しだ、分かっているな?』、と」
「おぉ、怖い怖い」
乾いた笑いを漏らして、ソファに脱ぎ捨てたおんぼろのコートを拾い上げる。
まだこちらの戦いは終わっていない、今回の騒動でまた色々と面倒事が舞い込んでくるだろう。その前哨戦がこれだ、と腹をくくる。
「――そろそろ、引退してもバチは当たらないんじゃないかなぁ」
「何言ってるのよ、まだまだやる事はいっぱいあるのよ」
「はは、手厳しいや」
――――――――――――――
時は、少し流れる。
年も明け、三が日を越えて1月17日。漸くシンもヒナミもその怪我の容体が落ち着いてきて、ヒナミは自力で歩ける程度に。シンは、車椅子であれば外出を許可される程度には回復してきた頃だった。
「行きたい所があるんだ」
「行きたい、ところ?」
ヒナミに車椅子を押されながら、中庭を散歩していた時。雑談の折、不意にシンがそう切り出したのが事の発
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