◆外伝・五◆ 〜白馬将軍の決意〜
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えないようにしていたのに。
……確かに、私は歳三と戦いたくはないさ。
私が、人生で初めて惚れた男だしな。
「白蓮さんがどう判断しようと、一度はアンタに仕えると決めたんだ。あたしは、アンタの判断に従うぜ?」
「菫……」
「やれやれ、先に言われてしまいましたね」
紅葉が苦笑を浮かべた。
「私も菫と同じ、白蓮様を主と仰ぐと決めたのです。意のままになされませ」
全く、二人揃ってこれだ。
私には過ぎた存在だよ。
そして、シ水関は陥落した。
曹操は有言実行だったという訳だ。
「あれが発石車(投石機)と攻城櫓か。凄い威力だったな」
「ええ。尤も、土方軍はある程度予測していたようですが」
そりゃそうだ。
いくら石や矢を放り込んだところで、あの要塞が一日や二日で崩せる訳がない。
そもそも、歳三にしちゃ諦めが良すぎる。
立役者の曹操も、勝ち戦だってのに表情が硬いし。
「やったのじゃ! 土方もこれで追い詰められたの」
「よっ! ご自分では何もしていないのに、手柄を独り占めする気ですね。流石お嬢様、あくどい!」
「わはは、もっと妾を褒めるのじゃ!」
……褒めてるのか、あれ?
ともあれ、袁術ははしゃいでるし、劉ヨウやら劉璋あたりはひたすらおべっかを使っている。
麗羽は……気落ちしているみたいだ。
けど、今の私に声をかけるのは躊躇われた。
偽勅書の事、麗羽に教えてやるべきかどうかで悩んでいたから。
歳三と麗羽の関係を考えるなら、本来は教えるべきなんだろうけど。
……でも、麗羽は感情の起伏が激しい。
取り乱すまではいかなくても、その事で挙動不審にはなるだろう。
そうなれば、曹操あたりに感づかれる可能性が高い。
はっきり言って、私は曹操を信じちゃいない。
あの溢れる覇気と野心は、どうしても油断ならないからだ。
第一、歳三に気に入ったから臣下の礼を取れ、ってしつこく迫っているのも気に入らない。
あいつは、そんな事で人様の下につくような男じゃない。
「でも、喜んでばかりはいられないわよ」
「どういう事じゃ、曹操?」
「あれよ」
「瓦礫の山ではないか。あれがどうしたのじゃ?」
首を傾げる袁術。
……ん、待てよ?
瓦礫の山、早すぎる歳三の撤退……まさか。
思わず麗羽を見ると、どうやら向こうも気づいたらしい。
「あら、わからないの?」
そんな袁術に対して、曹操は露骨に冷笑を浮かべる。
「わ、わかっているのじゃ。七乃、妾の代わりに答えるのじゃ!」
「え、ええっ!」
あ〜あ、張勳も泡食ってる。
私が助け船を出さなきゃならない義理もないし、そのつもりもない。
「僭越ながら。御大将のお考え、推察させていただいても宜しゅうございますかな?」
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