◆外伝・五◆ 〜白馬将軍の決意〜
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の事だ、露見したところで何とかなるだろ。
「此をご覧下さい。……璽の書体が、微妙に異なっているんです」
紅葉が比較に並べたのは、私が幽州牧に任ぜられたときの勅書。
……一体何処から持ってきたのやら。
口には出さずに、紅葉の手元を覗き込んだ。
「良く見て下さい。白蓮様がいただいた勅書の方は字体の一部が欠けています。ところが、こちらの勅書は」
「……確かに、欠けてないな」
ほんの僅かだけど、比べてみると違っているのがわかる。
「でもさ、紅葉。伝国璽っても印章だから、印泥の付け方で欠ける事もあんじゃね?」
「菫の言う事にも一理あります。ですが、璽とはこの国唯一の印。嘗て、王政君が毀損させたような場合ならともかく、字体の補修までこまめにやっているかどうか」
「今の朝廷にそこまでの余裕があると思えない。そう言いたいんだな、紅葉?」
「ええ」
漸く、事の重大さがわかってきた気がする。
袁術に出された、歳三と董卓討伐令が偽物だったとしたら……この連合軍自体の存在意義に関わる事だ。
「紅葉。この事は、他に知っている奴いないんだろうな」
「勿論です」
「……いいか、絶対に誰にも知られないようにしろ。菫、お前もだぞ?」
「うへっ、あたしの事信用してくれたっていいじゃんか」
「あなたはお調子者だから釘を刺しているのですよ」
紅葉に睨まれ、菫は肩を竦めた。
「はいはい、気をつけますって」
「本当に大丈夫ですか?……ところで白蓮様、如何なさるおつもりですか?」
どうするかって言われてもなぁ。
この事実を他の諸侯に知らせたとして、一体どうなるってんだ?
これだけの兵を動かしているんだ、私もそうだが諸侯の持ち出しだって馬鹿にならない。
勅令を果たせば、当然見返りとしての報酬が出る。
集った諸侯が期待しているのは、その一点だろう。
……中には、洛陽に攻め込んだら略奪しようって不心得者がいるかも知れないけど。
ともあれ、今更引くに引けないってのが実態だろうな。
「紅葉。これを理由に、もし私が連合離脱を宣言したら……どうなる?」
「はいそうですか、と認めて貰えるかどうか。最悪、土方様や董卓様と同じく朝敵と見なされるかも知れません」
「だよなぁ」
そもそも、私のところは連合軍全体から見れば小勢に過ぎない。
当然、影響力もない……自分で言うのも何だけど。
「様子見、しかないな」
「ええ。それが賢明でしょう」
「んー。けどさ」
菫が髪の毛を掻きながら、私を見た。
「何だ?」
「白蓮さんは、それでいいのかい?」
「……どういう意味だ?」
「いや、ほら土方さんの事だよ。白蓮さんとは、知らない中じゃないんだろ?」
「……ま、まあな」
いかん、顔が赤くなりそうだ。
努めて歳三の事は考
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