◆外伝・五◆ 〜白馬将軍の決意〜
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時はこの首を好きなようにするといいわ」
「み、皆も聞いたであろう? 二言はないぞえ?」
「ええ、わたしもそのつもりだから。あ、祭に指揮させて一隊は残しておくから。じゃ、またね」
ひらひらと手を振りながら、孫策は天幕を出て行った。
途端に、袁術は椅子からずり落ちそうになる。
「お嬢様。大丈夫ですか?」
「な、何でもないのじゃ。曹操、引き続き先陣はお主じゃぞ」
「ええ、そうね。対策は考えてあるから、戻って準備に取りかかるわ」
そう言い残し、曹操はさっさと自陣へと戻って行った。
「皆の者、大儀じゃったの。軍議が、これにて終わりじゃ」
やれやれ、やっとくだらない軍議から解放されるな。
何もしてないけど、変に疲れた気がする。
陣に戻ると、紅葉(程普)が難しい顔つきで考え込んでいた。
「戻ったぞ」
「あ、お帰り白蓮さん」
菫(韓当)が反応してくれたが、紅葉は私に気づかないみたいだな。
「どうしたんだ、一体?」
「それがさ、いきなりコイツを取り出したかと思うと、ずーっと考え込んでるんだ」
菫も困惑しきりだ。
その当人の前にあるのは、勅書の写しか。
……あれ、何か違うな。
「紅葉、ちょっと見せてみろ」
断ってから、書状を手に取った。
袁術から届いた勅書の写しとは、字が違う。
それに、文末には璽が押されている。
……まさか、これって。
「紅葉。これ、本物か?」
「……そうです」
やっと、紅葉は顔を上げた。
「どういう事だ? 本物は袁術の手元にしかない筈だけど」
「はい。袁術殿のところから、借りてきました」
借りたって、筆やらを借りるのとは訳が違うんだぞ。
「袁術殿の陣は緩みきっていますから。袖の下を握らせたらこのぐらい、朝飯前です」
「……ま、まぁいい。で、なんでそんな真似をしたんだ?」
「どうしても、気になる事がありまして」
「気になる事?」
「そうです。以前、学問を習っていた塾に刺史の子弟がいまして」
私は、黙って紅葉の話を聞く事にした。
様子からして、ただ事じゃないな。
「その時に、親の目を盗んで公文書を持ち出してきた事があったんです。……陛下の璽が押された文書を、です」
「へぇ。随分と度胸のいい野郎だったんだな」
「ええ。勿論、後で露見して手酷く叱られたそうですが」
そう言って、紅葉は菫に向かって苦笑する。
「その文書自体は然したる機密でもなかったのですが、璽を見る機会などなかったので、今でもよく覚えているんです」
「それで?」
「今回の勅書にも当然、同じ璽が押されている筈ですので、それを確かめてみたくなったんです」
「…………」
紅葉の奴、こんなに大胆だったのか?
そう思って菫を見ると……あ、眼を逸らしてる。
ま、袁術
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