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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第1話 約束は果たすとしよう
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わ!」
 本人に悪気はなさそうだが、それがかえって始末が悪く思える。
<えーと、説明しにくいですから、詳しくは着いてからのお楽しみということで>
 可愛い声に似合わず無慈悲な宣告に、愕然とせずにいられるだろうか。そうこうする間にも、とうとう現界の時間が来てしまう。
<それでは、皆のことをお願いします。いってらっしゃい>
「な、なんでさー!」
 そして、マギカの抑止力の言葉を背に、かつての口癖を叫びながら、エミヤは新たな世界へと旅立った。この上なくシュールな旅立ちだった。



「むっ」
 小さく呻きながら、眼を開く。最初に目に入ったのは、コンクリートの床だった。次に視界に移るのは、鉄の柵と何棟かのビル、そして空。そこで、どうやら何処かのビルの屋上にいるらしいことと、そういえば聞いていなかったがこの世界が以前の世界とそう変わらない時代であることを確認する。
 しかし、今はそれよりも気に掛かることがあった。
「何故こんなに目線が低いんだ?」
 呟いてみると、口から出た声は女性の様な高い声だった。更に言うならば、自分が今4本足でしゃがんでいることも気になる。しかも、その体制にまるで違和感がない。ついでにいうのならば、耳のあたりから生えているらしき手のような感覚で動かせる毛の様なものはなんなのだろうか。

 嫌な汗が体に浮かぶのを感じる。それを必死に堪えていれば、視界の隅に昇降口と、銀に光る窓が映った。それは半ばマジックミラーの様になっているらしく、ほとんど鏡の様に周囲の光景を映している。恐る恐るそこに近づき、意を決してそれを覗き込む。
「……な、ななな」
 すると、ガラスの向こうから、白い猫に似た、ぬいぐるみの様な生き物がこちらを見返してくるのだった。
「なんでさああああぁぁぁぁ……!」
 本日2度目の英霊の叫びは、天をも揺るがす程だったかもしれない。

「――解析、開始(トレース・オン)
 落ち着いた後、エミヤは自分の体を解析した。そして、自分がインキュベーターという地球外生命体になっていることを知る。本来ならこの生物に存在しないはずの魔術回路があること、それも本来の自分と同じ27本あることは、恐らくマギカの抑止力によるものなのだろう。
「それにしても……」
 解析を進める中で、このインキュベーターという生物の役割を知っていく。いや、その在り方は生物というよりも機械に近いだろう。

 この体の最大目的は、宇宙の寿命を延ばすことだ。時を追うごとに目減りしていく宇宙全体のエネルギー量を賄うために開発された、感情をエネルギーに変えるシステム。生物単体から、その生存に必要なエネルギーよりも膨大なエネルギーを抽出することができる画期的な仕組み。希望が絶望へと変わる、その時に感情が起こす変動をエネルギーに変える無慈悲
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