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魔術QBしろう☆マギカ〜異界の極東でなんでさを叫んだつるぎ〜
第1話 約束は果たすとしよう
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チャーの殻を捨てて現界を止めたエミヤの精神は、英霊の座へと引き戻されていた。きっと、座に戻ればこの聖杯戦争での出来事は、記憶でなく記録となるのだろう。自分が得た答も、感情を伴わないただの知識と化してしまうのだろう。
 それでも、大丈夫だと思った。例え今の自分が感じているものが一時のものであるとしても、その記録が座にいる本体に刻まれるのであれば、きっと自分は頑張っていける。その未熟だったころの自分の様な楽観的な考えに、不思議とエミヤは確信を持っていた。

「……?」
 しかし、その途中で怪訝に思う。確かに座へと向かっていたはずの自分の精神が、いつの間にか現世へと逆戻りしているのだ。しかも、どうやら聖杯戦争のサーヴァントとしてでも、守護者としてでもないらしい。
<貴方に、お願いがあります>
「っ!?」
 突然、声が聞こえてきた。そのことに、心底から驚愕する。その声が、何処から聞こえてきたのかはわからない。声の調子からして、少女のものらしいことがわかる程度だ。しかし、現世と英霊の座を繋ぐこの場は座と同様に現世の空間や時間から隔絶されている。そんな場所に、一体何が声を届けられるというのだろうか。

<お願いしてもいいですか?>
「何者だ?」
 質問に答えず、逆に問い返す。未熟だったころならばまだしも、正体不明の相手からの問い掛けに答える義理はない。姿の見えない相手を探りながら、返答を待った。
<ごめんなさい>
 一拍おいて、声の主が言葉を返してくる。
<今はまだ、貴方に私のことを詳しく話せないんです>
 心底申し訳なく思っているのだろう、その声音は何処か沈んでいた。

 そこで、ふと気が付く。今聞いているこの声の気配に、覚えがあることを。
――そうだ、この声、音自体や雰囲気はまるで違うが……
 それは、摩耗した記憶の果て、遥か遠き生前の日。世界からの契約を求められた時、“アラヤの抑止力”からの呼び掛けと気配がよく似ていた。しかし、似ているだけで完全に同じではない。即ち、この声の主はアラヤの抑止力と似て非なる存在。それに該当するものは、エミヤの知る限り1つだけだ。
「お前は、“ガイアの抑止力”なのか?」
<いいえ>
 しかし、エミヤの推論はあっさりと否定された。

<でも、あえて言うんでしたら、“マギカの抑止力”っていうところでしょうか?>
「マギカ?」
 聞いたことがなかった。怪訝に思っていると、弱腰気味に言葉が続けられる。
<その、私、抑止力としては新人で……>
「いや、抑止力に新人もクソもあるのか?」
 思わず突っ込む。抑止力とは、世界を存続させるための安全装置だ。エミヤが知っているのは人類の破滅回避のためのアラヤと星自体の生命延長のためのガイアの2つであるが、それに新しく加わった抑止力ということだろうか
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