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山羊の親子の再会
第一章

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                山羊の親子の再会
 フィリピン人ケン=ドミニク=アルセオはこの時彼が住んでいる街の郊外で幼い娘のテレサと一緒に散歩をしていた、その時に。
「メェ〜〜〜」
「お父さん、さっき」
「ああ、山羊の鳴き声が聞こえたな」
 ケンは娘に顔を向けて答えた。
「そうだな」
「この辺り山羊いた?」
「いや」
 産まれてからずっとこの街にいるがだった。
 心当たりがなく娘にこう答えた。
「お父さんは知らないぞ」
「そうなの」
「けれど確かに聞こえたな」
 その山羊の鳴き声がというのだ。
「それだったら」
「少し探そう、こっちだったな」
 道の傍の茂みの方に入った、そして。
 そこに行くとあ、茶色の毛で頭の上に白い部分がある子山羊がいた、山羊としては赤ん坊と言っていい外見だった。
 その山羊は一匹で悲しい顔をしていた、それでケンは娘に言った。二人共黒い縮れた髪の毛で目も黒い。褐色の肌で目鼻立ちははっきりしていて表情も明るい。
「森か何処かの群れからはぐれたか」
「そうなの」
「このままじゃどうなるかわからないな」
「豹とか虎に食べられる?」
「この辺りにはいないけれど悪い奴もいるしな」
 野生の肉食獣はおらずともというのだ。
「だからな」
「助けてあげるのね」
「今日はな、それで明日はお店は休みだ」
 家でやっている雑貨屋はというのだ。
「それでお前も学校は休みだし」
「それじゃあ」
「今日は家に連れて帰ってミルクをあげて暖かくして寝てもらって」
 そうしてというのだ。
「一緒にな」
「大事にして」
「明日の朝から家族を探すぞ」
「わかったわ」
 娘も頷いてだった。
 二人で家に連れて帰って妻のマリア、長い黒髪で娘そっくりの顔の彼女にも事情を話した。するとだった。
 マリアもだ、それならと頷いた。そして一家はこの夜は三人で山羊にミルクをあげて抱いて寝てそうしてだった。
 次の日の朝早くからご飯を食べてだった。父はSNSを片手に妻と娘に言った。
「街の近くの森に山羊の群れがいる」
「それじゃあ」
「この子は」
「その群れをはぐれたんだな」
 こう話した。
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