第106話『師匠』
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らいだと思うのだが。
「いや、風を放出したり身体に纏わせるだけならまだしも、刃として繰り出すのはさすがにびっくりしたよ。普通はそこまでできないから。よっぽど訓練したんだね」
「えっと、まだ魔術が使えるようになってから3ヶ月くらいしか経ってませんけど……」
「……え? 嘘でしょ?」
感心したように頷いていた風香に事実を伝えると、鳩が豆鉄砲を喰らったかのようなポカンとした表情になった。しかし、嘘ではない。
「……そんな、それならあまりに早すぎる。器用とか、そういう次元じゃないよ」
「そう言われても……」
できるものはできるのだと、天才じみたことを言おうとしてやめる。けどできるのは事実なのだ。"鎌鼬"も"風の加護"も、イメージすればすぐにできた。まさかこれが普通じゃなかったなんて。
そんな様子の晴登に、風香は指を立てて説明する。
「いい? 元々、能力っていうのは、レベルによって扱いに制限がかかるの。例えば……私は"脚にしか"魔術を使えなかったり」
「え、そうなんですか!? ……てか、そんなこと教えちゃっていいんですか?」
「説明するためだもの、仕方ないよ。それに、バレたところで何かが変わる訳じゃないでしょ?」
「それは、まぁ……」
思い返せば、風香が脚以外で魔術を発動したところをついぞ見ていない。
能力に制限があるなんて話、終夜から聞いたことはなかったが……。
「それに対して、君の魔術は汎用性が高すぎるの。レベル4以上、もしくは熟練したレベル3と言われれば納得するけど、君はまだ覚えたてのレベル3。それなのにそこまで魔術を扱えているのは、普通に考えておかしいの」
「そうだったんですか……」
風香の言い方から察するに、レベル3の能力でも少しは制限があるのかもしれない。しかし、会得してから日が浅いせいで、制限されているのかどうかすらもよくわからなかった。気づかなかっただけで、実は終夜や緋翼も制限を抱えているのかも……。
「あのさ……良ければ、君の能力を教えてくれないかな? 代わりに私も教えるから……」
風香はおずおずとそう申し出た。
魔術師にとって、能力を教えることは手の内を晒すことに等しい。しかも彼女とは本戦で当たる可能性もある。当然、お互い不利になってしまうのは必至だ。
それにもかかわらず訊きたいというのは、同じ風属性を扱う魔術師としての好奇心ゆえだろう。
晴登は一瞬迷ったが、別に隠すことでもないし、他でもない師匠の頼みだと考え、教えることにする。
「俺の能力は、"晴風"って言います」
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