暁 〜小説投稿サイト〜
ユア・ブラッド・マイン―鬼と煉獄のカタストロフ―
episode16『泣いた赤鬼』
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
たんだ。

「――いつまで茶番やってんだ、なぁ、オイ……!!」

 極光。

 爆炎。

 炎の竜巻じみた熱量の奔流が捻じれ、蠢き、空から地上へと下ってくる。シンだけに収まらない、周辺全てを消炭にしかねないほどの威力を秘めた、超高温の灼熱の竜。紅蓮はそのアギトを大きく広げて、シンたちを容易く?み込まんと――。

「ぜ、アァッ!!」

 踏み込みを一歩。
 その衝撃は容易く大地を揺らし、足場を形成する魔鉄交じりのコンクリートに大きく亀裂を入れる。シンの強烈なオーバード・イメージに沿って砕けたそれらはシンの眼前で組みあがり、家族たちをすっぽりと覆い隠すほどの大きな壁へと変化を果たす。

 豪ッ!という炸裂音と共に壁は瞬く間に赤熱する。僅か三秒にも満たない時間稼ぎ、だがそれでも十分すぎるほどの対抗策が、今のシンの手には握られている。

 否。
 その握り込んだ拳こそが、この焔を撃ち破る力であると、逢魔シンは知っている。

「シ、ィッ――」

 振り抜いた拳が、残像すら置き去りにして紅蓮の中心を撃ち抜く。
 風圧の鎧は焔の竜の中枢をズタズタに抉り抜いて、その中枢にて灼熱を宿すスルトルを捉える。重い風の弾丸がその鳩尾に突き刺さって、その長身をひしゃげさせた。

 続けて跳躍、風圧の壁を足場に空中で軌道のベクトルを変えて、銃弾みたいな速度で赤い残像が夜空に描かれた。

「は、ァ?」

「オ”オ”オオオォォッ!!」

 握り込んだ拳が、スルトルの頬にめり込む。
 べきゃり、と頭蓋骨が割れる手応えが手に跳ね返ってくる。振り抜いた一撃のまま体を捻って体勢を一転、回転の勢いのままに踵をその背に撃ち降ろせば、スルトルの体はソニックブームじみた衝撃波をまき散らしながらコンクリートの海に突き刺さった。

 聖憐からこちらに戻ってきたときの歪な力の高まり方とは違う。体が軽い、力が溢れる、何処か高揚感すら感じられる不思議な感覚。体の中に熱が滾り、神経の隅々にまで活力の行き渡る実感がある。

 握った手のひらの中には、確かな未来への希望を込めて。

 目の前の絶望を、撃ち破る――。

「こ、の……ッ!!許さねぇ、オレのなにもかもを、オレの全てを、テメェが、テメェ如き餓鬼がッ!!」

「お前が、何を言ってるのか、分からない」

「テメェ如きに理解ができるか、されてたまるか!!この、馬鹿な世界を、オレの炎で、オレの煉獄で!罰するまで、オレは……!」

「――いい。もう、喋るな」

 聞くに堪えない、恨みと怒りの滲んだ咆哮だった。
 この男がこれまでの生で何を見て、何を知り、何を得て、何を失ったのか。そんな事はシンの知るところではないし、知るつもりもない。仮にこの男が過去にでも悲惨な目にあって、その
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ