episode16『泣いた赤鬼』
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たんだ。
「――いつまで茶番やってんだ、なぁ、オイ……!!」
極光。
爆炎。
炎の竜巻じみた熱量の奔流が捻じれ、蠢き、空から地上へと下ってくる。シンだけに収まらない、周辺全てを消炭にしかねないほどの威力を秘めた、超高温の灼熱の竜。紅蓮はそのアギトを大きく広げて、シンたちを容易く?み込まんと――。
「ぜ、アァッ!!」
踏み込みを一歩。
その衝撃は容易く大地を揺らし、足場を形成する魔鉄交じりのコンクリートに大きく亀裂を入れる。シンの強烈なオーバード・イメージに沿って砕けたそれらはシンの眼前で組みあがり、家族たちをすっぽりと覆い隠すほどの大きな壁へと変化を果たす。
豪ッ!という炸裂音と共に壁は瞬く間に赤熱する。僅か三秒にも満たない時間稼ぎ、だがそれでも十分すぎるほどの対抗策が、今のシンの手には握られている。
否。
その握り込んだ拳こそが、この焔を撃ち破る力であると、逢魔シンは知っている。
「シ、ィッ――」
振り抜いた拳が、残像すら置き去りにして紅蓮の中心を撃ち抜く。
風圧の鎧は焔の竜の中枢をズタズタに抉り抜いて、その中枢にて灼熱を宿すスルトルを捉える。重い風の弾丸がその鳩尾に突き刺さって、その長身をひしゃげさせた。
続けて跳躍、風圧の壁を足場に空中で軌道のベクトルを変えて、銃弾みたいな速度で赤い残像が夜空に描かれた。
「は、ァ?」
「オ”オ”オオオォォッ!!」
握り込んだ拳が、スルトルの頬にめり込む。
べきゃり、と頭蓋骨が割れる手応えが手に跳ね返ってくる。振り抜いた一撃のまま体を捻って体勢を一転、回転の勢いのままに踵をその背に撃ち降ろせば、スルトルの体はソニックブームじみた衝撃波をまき散らしながらコンクリートの海に突き刺さった。
聖憐からこちらに戻ってきたときの歪な力の高まり方とは違う。体が軽い、力が溢れる、何処か高揚感すら感じられる不思議な感覚。体の中に熱が滾り、神経の隅々にまで活力の行き渡る実感がある。
握った手のひらの中には、確かな未来への希望を込めて。
目の前の絶望を、撃ち破る――。
「こ、の……ッ!!許さねぇ、オレのなにもかもを、オレの全てを、テメェが、テメェ如き餓鬼がッ!!」
「お前が、何を言ってるのか、分からない」
「テメェ如きに理解ができるか、されてたまるか!!この、馬鹿な世界を、オレの炎で、オレの煉獄で!罰するまで、オレは……!」
「――いい。もう、喋るな」
聞くに堪えない、恨みと怒りの滲んだ咆哮だった。
この男がこれまでの生で何を見て、何を知り、何を得て、何を失ったのか。そんな事はシンの知るところではないし、知るつもりもない。仮にこの男が過去にでも悲惨な目にあって、その
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