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麗しのヴァンパイア
第三百五十五話

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              第三百五十五話  夜を前にして
 カーミラは夕刻になって目覚めた、そうして夕陽を見てから自身の使い魔達に対してこんなことを言った。
「さて、今夜はね」
「どうされますか」
「散策ですか」
「それとも読書ですか」
「散策をして」
 まずはそれでというのだ。
「そして読書と音楽をね」
「両方を楽しまれますか」
「そうされますか」
「そうするわ」
 こう使い魔達に答えた。
「これからは」
「左様ですか」
「それではですね」
「ご夕食の後で」
「まずは散策に出られますね」
「そうするわ。ただ」
 ここでカーミラはこんなことを言った。
「最近神戸の街を歩いても」
「それでもですか」
「そう言われますか」
「その様に」
「可愛い娘、奇麗な娘はいても」
 それでもというのだ。
「色気があるね」
「そうした方はですか」
「お会いしていないですか」
「そうなのですか」
「どうもね。血を吸うことはしなくなったわ」
 吸血鬼だが、だ。
「血を吸わずともね」
「今のご主人様はお食事で栄養を摂れますね」
「そうしたお身体になりましたね」
「特にワインで」
「そうなりましたね」
「ワインと血は同じものよ」
 カーミラは微笑んで話した。
「私にとってはね」
「左様ですね」
「だからですね」
「今は血を飲まれないですね」
「けれど色気のある娘はね」
 そうした娘はというのだ。
「少ないわね」
「そうした時もありますね」
「どうしても」
「そうね、そんな時もね」 
 カーミラは使い魔達の言葉に頷いた、そのうえでまずは夕食を摂ったのだった。


第三百五十五話   完


                  2021・4・1
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