第七話 真夜中の悲愴
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・・」
2小節が終えたところで、
「まさか、この曲、ベートーベン作曲、悲愴第二楽章・・・」
ベートーベンは、晩年近くに、目も耳も不自由になり、苦悩の末この曲を作曲した。彼は視覚のない暗闇の中、一瞬の光を求めながらこの曲を作曲されたとされている。彼の曲名はすべて、番号であるが、このは「悲愴」と自ら任命した。
「この曲をこんなにも深く表現できるなんて・・
深谷先生・・あなたって人は、どこまでも、不幸で、悲しい人ね・・」
このとき、待鳥は、とてつもない悲しみの底にどこまでも落ちていくのだった。
「この曲は、あなたの苦しみそのものだわ・・
ずっと、私は誰よりも近くで、あなたを見てきたつもりよ・・
あなたは、私といるとき、笑ったり、くだらない話をするだけで、何一つ言ってくれない。弱いところをね・・
でも、もう分かったから。演奏をやめて・・
もう、これ以上聴けないわ・・」
幸代は呟いた。
「涙が止まらないわ・・・」・
「もう、やめて!分かったから!」
幸代は、叫んだ。
賢治は、演奏を辞め、体育館中央にいる待鳥に気がついた。
そして、無表情に幸代を見た。
「・・・・・」
「深谷先生、私ね・・」
涙で、声にならなかった。
賢治は一言った。
「ああ・・言いたい事は分かっている・・
この旋律は今の俺の情緒そのものだ・・・
最後まで聞いてくれるか・・」
「・・・・・」
待鳥はゆっくりとうなずいた・・
「2人で、その光を探しましょう・・
かつて、ベートーベンが求めたように・・
でも、あなたには、もう時間がないわ・・・・」
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