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幻の旋律
第六話 美的感受性を求めて
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大牟田文化センター大ホールには大勢の人が集まっていた。今日は、時空高校の文化祭ステージ発表の日である。やがて、最後のプログラムが始まった。
「最後は何だ・・・」
賢治は退屈そうに座っていた。
最後のプログラムは、音楽教師であり、吹奏楽部の顧問でもある待鳥幸代率いる、オーケストラだ。もちろん彼女はピアノ演奏者である。
「ピアノ演奏か・・・俺の副担任、音楽教師の町鳥幸代・・・ちょっと、顔がいいからって調子にのりあがって・・」
賢治に対して強い口調でものを言う若手教員である。幸代は、この学校で憧れの正当派女性スターだった。そして、演奏が始まった。
曲は、映画「砂の器」のテーマ曲であるピアノ協奏曲「宿命」だ。

幸代は、鍵盤を見つめながら呟いた。

「私がまだ幼い頃・・
ある二人の男が砂浜を歩いていました・・・」

そして、力強くピアノソロが始まった。

「気持ち良さそうだな・・・
音楽てのは、そんなに気持ちいいものなのか・・
あまりこの女の事、好きではないが・・」
賢治は目を閉じ想像した。

二人の男は目指していた
有明沿岸をただ果てしなく歩くだけでなく・・
何かに導かれるように・・
それが使命なのか・・・
時には激しく、時には穏やかな風が吹く

「この室内で風を感じるのか・・
潮の香りもしたような・・・」
賢治は、この時、感性を極限状態まで磨ぎ澄ましていた。
「この曲、宿命と言ったな・・なぜ俺はこんな情景を想像してるのか・・・
音楽とはそんな空間までも作るのか・・・」

やがて、男はひとりで歩き続けるのです・・
そう、永遠に・・・
私は何もできずに・・
ただそれを見てるだけです・・

幸代は、演奏が終わり、静かに鍵盤を閉じ、皆に深い一礼した・・

このとき、賢治は新たな潜在能力が芽生え始めた。
「俺も練習すれば弾けるかな・・・」
賢治は、はずみでそんなことを考えてしまった。

隣に座っていた、英語科の平本教諭は興奮していた。そして、賢治に言った。
「先生!私、決意しました・・俺達、バンドを結成しますよ!」
「は?なに言ってるのですか?・・」
「俺は見ていられない・・来年は、俺たちの時代だ・・・ハハハハ」

この先生は賢治の家族に関する噂を聞いて、哀愁の香りを感じたのだ。才能ある音楽科には哀愁が存在すると信じていたからである。彼は、賢治を自分の音楽の世界へと引きこもうと考えたのである。
翌日、平本先生は賢治に、突然クラシックギターを手渡した。彼は、ギターの達人である。

「深谷先生、これを今日から練習して下さい。来年の文化祭まで一年もある!そして、来年は俺達が主役だハハハハ」
賢治は、はっとした。賢治は、昔から、音楽に興味を持っていた。興味はあったものの音楽を始
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