暁 〜小説投稿サイト〜
幻の旋律
第六話 美的感受性を求めて
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
楽譜のコピーに行った。コピーの最中、後ろのおじさんが、賢治に声をかけた。

「おたくは、何か楽器をしてるんですか?」
「はい、ピアノをまだ始めたばかりですが!」

賢治は、イキイキと答えた。
「そうですか、私らも素人そうですよ。今、絃楽器サークルのリーダーをやっております。今、ピアノパートを探していたところです!いや、そんな事はどうでもいい!とにかく今度遊びに来ないですか!」
「え!・・オーケストラですか!興味があります!」
賢治は感激した。
「本当に始めたばかりですが・・」
この時、賢治は始めて、2週間とは言わなかった。
「分かりました。お願いします。」
そのおじさんは大喜びであった。若ものスカウトできたからである。
「それでは明後日に・・・・・」

「深谷賢治と申します。本日は見学に参りました・・」
皆は、喜んでいた。そこは、12人という小規模のオーケストラであったが、介護施設、祭りなどでコンサートを催していた。
ある女性のピアノ経験者が賢治に言った。
「では、なんか一曲弾いて下さい・・」

「え?・・・」

賢治は見学に来たつもりだったため驚いた。
しかし皆はすでに拍手をしていた。
「はい・・では私の一番好きな曲を弾きます・・」
賢治は、自分なりの強弱をつけて弾いた。皆は感動していた。

「あなた、けっこういけますね。素人ではないわハハハ強弱もなかなかですね・・」
「では、今から、チェロ、バイオリンの皆様と合わせてこの基本曲を弾いて下さい!いいですか?」

賢治は楽譜を受け取った。
その曲とは「翼を下さい」であった。確かにオタマジャクシに数は極めて少ないのだが・・
「あのー、今の私には無理です・・・」
その言葉に、皆は驚いた。

「は?何を言ってるのですか!あなたが弾いてた曲より簡単じゃないの?全く冗談きついわハハハ・・」
「いや・・だから・・暗譜しないと弾けません、まだこの曲しか弾けませんから・・」
「なに!この曲だけ!どういう事なの!いつからピアノを・・」
「2週間前です・・」
「・・・・・・・・・・・」

この瞬間、皆は仰天し言葉を失っていた。

「何なの人、短期間でこんなに表現できるの?なんて人なの・・」
「いったい、この曲をどうやって暗譜し弾けるの?」
「だって、この曲、周期性が強いから・・ここなんか・・・」

この事件をきっかけに小規模であるがオーケストラに入団した。その後、この一団は、地域の公民館、介護施設などで演奏活動を始めるのだ。そこで数多くの高齢者達と親しくなったのである。もちろん近所の住人達から、真夜中の練習許可が認可されてしまったのである。彼は、この時点で、すでに音にこだわりを持っていた。それは普段練習している自宅のピアノは最高級だから
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ