第五話 ロミオとジュリエット
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・・嬉しい限りだぜ・・
今はどうしてるのか・・幸せであればいいのだが・・
麗子・・あの日、俺達二人は時代の外に弾き出されたんだ・・
そんな俺達は、黒いレザーに抱かれた、ロミオとジュリエットだぜ・・」
やがて、くわえていた葉巻は地面に落ちた。
平賀源内の葬儀を終え、二人は真夜中に未完成の鉄橋を眺めていた。有明工業は倒産し工事は中断された。そんな寂しげな橋を眺めながら呟いた。
「私達はもう会わない方がいいかもね・・」
「そうだな、俺達二人の存在は危険だろう・・」
「ねえ、私の父も成仏出来たかしら・・・」
「きっとそうだよ・・・」
「もし、あのとき、組長がいち早く店を出ていなかったら、俺も・・
俺が生かされた理由・・
組長世話になりました・・
私なりの供養をしていくつもりです・・
あなたに私は生かされた・・
その意味を考えて見ます・・
だから、どうか安らかに・・・・」
そう言い、組長の骨を海に流した。
「なあ、俺は何故、生かされたのかなあ・・・」
「組長さんは、そのお爺さんの意思を引き継ぎ、橋を架け続けた・・
きっと、組長さんにとっての使命だったに違いないわ・・
そして、あなたは何かに導かれるよう、この第七工事現場にやって来たのよ・・
だからそんなあなたにも、何か重要な使命がある気がするの・・
これは女の感よ・・・」
「なあ・・それより二人でこの橋を渡らないか・・」
賢治は美香の手を握った。
二人は何かに導かれるかのように、泥だらけでまだ整備されていない不安定な橋を渡り始めた。しかし美香は途中で止まった。
「どうした・・・怖いのか・・」
「私はこの橋を渡ってはいけない・・・
何だか、そんな気がするわ・・」
「ねえ・・二人で初めて食事したあの日、覚えてる・・
あの日ね・・私はあなたを騙すために来たんじゃないの・・」
「・・・・・」
「私は、あの日ね・・あの汚れた仕事の引退を決意していたの・・・
ただ、あなたと純粋に食事をしたかっただけだわ・・・
今頃言っても、信じてもらえないでしょうが・・
あんな形の出会いを、今でも恨んでるわ・・
何処か別の場所で、あなたと、偶然の出会いがしたかったわ・・」
美香の声は震えていた。
「この出会いには意味があったんだよ・・
俺は今まで、金と数式だけが、財産だと信じ生きて来た・・
それは決して俺を裏切らないからだ・・
君と過ごしたあの日々、あまりにも刺激的だったよ・・
この二人の時間も、今となっては財産なんだ・・・
そう考えることができたのは、君のおけげなんだ・・・」
「だから・・この出会いは偶然でなはなく、必然なんだよ・・
ある目的に向けての過程なのかもしれない・・」
「ねえ・・最後に・・今夜、
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