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幻の旋律
第四話 伝説の測量師
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岸住人に熱弁した。

「このさえない沿岸を開発し、道路を通せばこの有明沿岸には潤いが生まれる!
どうか、この伊能忠敬に協力なされ!」

すなわち彼は測量をすると同時に沿岸地区で政治活動をしていたとも言えよう。
当時最大規模の有明工業株式会社の社長は、彼が書いたその有明沿岸測量図を見て、感激し、良蔵に全面協力した。この会社は金竜組に守られていた。それに続き、数多くの小規模の土木会社、建設会社の協力を得て、一九八〇年、有明沿岸道路大規模工事が正式に開始された。やがて、荒れ果てた土地も整備されかけ、正式な道路とまではいかないが、トラックが通れる程の舗装は出来たのだった。建設現場の道路沿いには中小企業が進出し沿岸沿いの商業が発展することを願って地域の住人にも大歓迎されていた。しかし、良蔵にはもう一つの目的があったのだ。

「原子力の時代はやがて終わる・・再び石炭の時代が来るのだ!
そしてそのとき、この有明沿岸道路は巨大な石炭流通ルートとなり九州、いや全国に大量の石炭を運搬するための生命線になるのだ!
そうなれば、このさびれたこの大牟田市は九州を代表する巨大都市に変貌する!」

元三池炭鉱の社長のバックには銀竜組が影をひそめていた。炭鉱の倒産により、破たん寸前であったその組はその再建のためある新たな事業を展開した。ある日、組長代理である若頭佐々木が良蔵を訪問した。

「毎週金曜日に、この道路の通行を許可してもらいたい!コンテナ型大型トラック約三0台、三池港から、中島絶壁まで通過する。どうか許可を願いたい!」

この時、良蔵は、佐々木と契約し通行料金として多額の金を受け取った。工事には差し支えないとの条件で契約したのだ。このとき、良蔵は沿岸工事に専念していた為、この連中が何を運んでるというのは気にもしていなかった。やがて、この銀竜組も最大規模の組に発展した。すなわち、この金竜組、銀竜組の二大組織は有明沿岸道路の建設過程により、急成長をとげたと言っても過言でない。 
良蔵の一人息子である秀長は、事業の引き継ぎをさせるため土木工学科に進学させ、在学中に双子をもうけた。二男は父親になつき、長男は良蔵になついた。学位は取ったものの進路において激しく二人は衝突した。秀長は警官を希望したのが理由である。やがて良蔵が出した条件で決着が着いた。それは、良蔵は長男を、秀長は二男を引き取り別居することだ。このような大人の事情により二人の息子は顔を合わせる事はなかった。
やがて、銀竜組の急激な勢力拡大に対し、敏感に何かを直感した良蔵は、複数の大型トラックの列が中島川の上流に向かうのに注目した。そして、夜中に登山した。そこには巨大ダム建設途中だった。しかしそこでとんでもない事実を知るのである。そこには銀竜国発展の決定的な秘密があったのだ。有明沿岸は、人気の少
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