第一話 命題の真偽
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「え!!なんですか!」
「それは、メールアドレスだ!」
「は?」
「そういえば、アドレス交換の際、赤外線受信をしたため、その彼女のアドレスを直接見ていないのだ。そこで、改めてそのアドレスを直接目にしたところ、俺は納得した。証明完了だ・・」
賢治は続けた。
「メールアドレスにその謎は隠されていた。アドレスとは普通、数字、記号、アルフャベットの配列で構成されている。」
「まあ、そうですよね・・・先生の言ってる意味がわかりません」
クラスは賢治が言ったことに対し頭を抱えていた。
賢治は結論を言った。
「そのアドレスが、意味のない、ランダムな配列だったのだ!」
「は!なるほど!」
皆一斉にその言葉を発した。納得する瞬間だった。クラスは静まり返り、「ホー」という息だけが聞こえる。
「普通、メールアドレスは、意味のある配列であろう。例えば、自分の誕生日、名前・・やはり君達もこの作成には凝るだろ・・その女の場合、手間をかけ登録してないのだ・・契約時の状態なのだ。すなわち携帯電を二つ持ってると考えるのが普通であろう・・そういうわけだ!」
「先生!凄すぎる。たかがメールアドレスの配列で、それを暴くなんて!」
「ということは・・・先生の友達の彼女である恵美さんは同類なんですよね!」
「そういうことだ!お互い知らないわけなかろう・・彼は、すでにプレゼントを2つ貢いでいた。手遅れだったよ・・友人としてもっと早く気づいてやるべきだった。無念だ・・その事実により俺の推理は極めて高い信頼性となるであろう。証明は完了だ!」
「先生!FBI捜査官にみたいだ!深谷捜査官!ハハハハ、先生は職業間違えたね!
今日の授業最高だった!ハハハハハ」
この授業中、あまりにも盛り上がりすぎて、隣で授業していた年輩の教員が
「深谷先生、あまり雑談で盛り上がるのは辞めて下さい。授業妨害です。一体何を話してたのですか!」
「いや、もちろん数学の授業ですよ。ある命題の真偽についてです・・」
その日の学級日誌にも、4時間目数学(命題の真偽について)と日直の生徒は書いたのだ。この授業は後に生徒達の心の中に、強烈に刻まれたのであった。
( 命題の真偽 深谷賢治 授業記録より )
実はこの話にはとんでもない続きがあった。なんと、賢治は、翌日の土曜日に美香がデート商法の手下だと知りながら、彼女に会っていたのだ。理性のある普通の人間はここまでしないであろう。この賢治の行動は、単なる好奇心なのか、いやきっと何か目的があったのに違いない。しかし、この事件で賢治はとんでもない世界に入ってしまうのである。
四人で別れた直後、女性側はこんなやり取りをしていた。
「ねえ!あんたしっかり騙すのよ・・」
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