暁 〜小説投稿サイト〜
SHUFFLE! ~The bonds of eternity~
第二章 〜罪と罰〜
その一
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失礼しますね」

「稟、お前自分の部屋くらい自分で掃除しろよ」

 反論しようとする稟だが、

「いいんです。私が好きでやってる事ですから」

 楓の台詞に言葉を飲み込む。

「柳、下に行こう」

「ああ」

 リビングのソファに座る。

「確かにあれじゃ無理だな」

「分かってくれてありがたい」

「いつもあんな感じなのか」

 頷くことで肯定する稟。

「もしかして家事関係は全部楓がやってるのか?」

 再び肯定。考え込む柳哉。

「……桜からはどれくらいまで聞いてる?」

「仲直りした、ってところまでは」

 ということはその後のことはほとんど聞いていないのだろう。もしくはあえて聞かなかったか。

「罪滅ぼし、か?」

「いや、気にするな、とは言ってるんだけどな」

 さすがにそれは無理だろう、と柳哉は思う。桜から聞いてはいるが、あくまでもそれは桜の視点からの話でしかない。実際は相当ひどい目に遭っていただろう。この幼馴染は。それに……。

「どうした?」

「いや、何でもない」

 その後は楓も交えておしゃべりに興じた。

(何なんだろうか? どこか暗いこの感情は……)


          *     *     *     *     *     *


 夕方、そろそろ帰ろうと柳哉は腰を上げる。夕食に誘われたが既に昼食もご馳走になっている。さすがにこれ以上は気が引けた。帰ることを伝え、その前にとトイレを借りる。出るとキッチンから声が聞こえた。

「稟君は座っていてください」

「いや、でもな」

「いいんです、私がやりますから」

「いや少しぐらい……」

「稟君のお世話をするのは私の生きがいなんです! ですから……」

 私の生きがいを奪わないでください、と言う楓に根負けしたのか、稟は諦めたようだ。

「稟、楓、それじゃ帰るわ」

「あ、ああ」

「あ、はい」

 稟が見送りに出る。楓は料理から手が離せず、プリムラはそのサポートに付いている。

「それじゃ、また明日な」

「ああ、また明日」

 そう言って柳哉は芙蓉家を辞した。
 その帰り道。

(まただ。一体どういう……?)

 柳哉は昼にも感じたどこか暗い感情に悩まされていた。しかも少し大きくなっている。

(嫉妬ってわけじゃなさそうだが……)

 最初に考えついたのがそれだった。しかしそれなら、この感情は稟に向くはずだ。しかし実際にはそれは楓に向いているように思う。だが自分には楓に嫉妬するような理由など無い。ならば一体なんなのか。答えを探しながら柳哉は歩いて行った。
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