まどり探偵 第1話 前編
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ってきた人々に、おばさんが涙ながらに訴える。
「ふん、連れ戻す前に帰ってこれる場所でも作ったら? このバカ!」
あわわわ。まどりちゃんは毅然とした態度で見物人をキッと睨み返すと、商売の邪魔だよと手を振った。そして「オープン お気軽にご相談ください」の札をひっくり返して「クローズ また明日どうぞ」にする。
まだ外で演説しているおばさんを放っておいて、事務所へ帰ってきた。まどりちゃんはソファーに倒れこんで私のスカートに顔をうずめると、今日は帰っていいわよと言った。有名人は大変だなぁと私は思ったものでした。
「まどりちゃん、ヒロトくんは探さないの?」
「いい、探したくない」
「でも、こんなに外暑いから、迎えに行ってあげないと倒れちゃうかもよ」
「倒れたいのは私の方よ。家出した子供なんて知らない」
中学生のヒロトくんは少なくともまどりちゃんより年上なんだけど……って思ったけど、年齢のことを言うとまどりちゃんはすぐに人を事務所から蹴りだすから言わないでおいた。まどりちゃんは自分が十二歳であることがあまり好きじゃないみたい。
「私の専門は【屋内】なの。家出息子の行先なんて分かるわけないじゃない」
「前話してたやつ?」
「暴力系犯罪の八割は屋内で起こっている。犯罪率の上昇に伴い、不動産鑑定士には独立した捜査権が認められる」まどりちゃんはわたしと初めて出会った時と同じようにすらすら言った。捜査現場で名乗ることが多いのだと思う。
「でも屋内に問題があるのかもしれないよ」
まどりちゃんは仰向けに寝がえりをうつと、乙女的にはあんまり見られたくない角度で私のことを見上げた。少し熱っぽい、子供の瞳にしかないきらめきが双眸に燃えている。思わずドキッとした。
「問題のない家庭なんて、あるのかな」
まどりちゃんは不意にこぼした言葉を、帳消しにしたがるみたいに跳ね起きると、バイク回してと言った。
「行くの? まどり探偵」
「あんたも責任とんなさいよ、かんな」
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