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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第60話 エル=ファシル星域会戦 その4
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。作戦終了後にエルヴェスタム氏にこっそり連絡し、とりあえずは二人しか知らない旨を伝えなくてはならない。俺の一連の行動にジャワフ少佐も口を押えて笑いを堪えつつ、自分も勿論黙っていると手振りで応えてくれた。

「針の筵だったでしょうな。二二歳、しかも実戦経験の殆どない中尉についていける人間などそうそうおらんでしょう」
「でしょうねぇ」
「英雄的な働きですが、自ら報道には出ない姿勢に好感が持てますな。一度の成功を誇張し、会う度に勲章を見せびらかす輩が多い中では貴重な存在ですよ」
「そういうお知り合いが?」
「陸戦部隊にも山ほど居りますよ。討ち取った装甲擲弾兵のマスクを自宅の壁に貼り付けているような低次元の、悪趣味な奴らがね」

 それは先日リューネブルクを批判した口調よりもさらにキツイものだった。それがジャワフ少佐の本心かどうかはわからないが、少なくとも宇宙戦部隊から派遣された暇な連絡士官と三時間のお散歩に付き合ってくれるくらいの器量はあると分かっただけでも良しとしたい。

 果たして二時間三〇分後。モンティージャ中佐から情報収集終了の連絡を受け、改めて俺とジャワフ少佐は管制センター内に臨時開設された地上戦司令部の隅に移動し、作戦の進行状況を耳に挟みつつ、エル=ファシルに残された旧行政府・旧軍・民間の資産データを自走端末から吸い出していく。

 今のところエル=ファシルの中央都市より二〇〇〇キロほど離れた荒野に前進司令部を建設するという方針で、その周囲の上空・軌道の制宙権を確保するよう対地攻撃用強襲艇や軌道展開型大気圏内戦闘機が次々と降下母艦から発進している。帝国側の防御設備が各都市の内部にどうやら設営されているようで、俺が考えるにかなり面倒なことになりそうだった。

「予想通り都市型戦闘師団の主戦場となりますが、ジャワフ少佐から見てもこの状況は厳しいですか」

 作戦司令部にあって軍事作戦の立案をやっている俺がする質問ではないように思えるが、地上での作戦は、地上戦部隊司令部が担当しているので、俺の責任範囲外だ。ジャワフ少佐も統括予備参謀である以上本来であればもっと主体的に軍事作戦に関わるべきなのだが、連絡士官業務に専念せよと指示でも出ているのか、管制センターに設置された仮設メインスクリーンを見つめながら、暢気に珈琲を飲んでいる。はっきり暇なので、俺は質問したわけだが、ジャワフ少佐は小さく肩を竦めると、忙しそうに指示を出している同僚達を尻目に俺に囁くように言った。

「実際に都市内で戦闘になってしまえば厳しいですが、敵の地上戦部隊指揮官は間抜けのようで無力化自体は楽勝でしょう」
「楽勝?」
「惑星エル=ファシルには、人口一〇万人以上抱えていた都市は三つ」

 ジャワフ少佐は、俺の自走分析端末を指差す。機能としてつけられて
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