壱ノ巻
由良の縁談
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なんだか素直に喜べないわね。
「じゃ、来て。由良は、家にいるから」
「瑠螺蔚さまっ!」
由良は、あたしを見ると火がついたように泣き出した。
「私は、嫌ですわ!徳川家などに、嫁ぎたくはありません!三浦さま以外の、誰にも嫁ぎたくはないのです!」
あたしはぎょっとして周りを見回した。
高彬は、いない。気を利かせてどこかへ行ったらしい。
『三浦さま』って、由良、好きな人いたの…。そりゃぁ好きでもない人に嫁ぎたくないわよね。
「そうよね、由良。好きな人がいるのに他の人の奥方になるのは嫌よね」
「瑠螺蔚さまーーーーー!」
由良は、わんわんと泣いた。
ひとしきりあたしにしがみついて泣くだけ泣くと、由良はぐずぐず鼻を啜りつつもぴたりと泣くのをやめた。
「…ごめんなさい、瑠螺蔚さま。私…っ、誰かに話を聞いてもらいたかっただけなのですわ。覚悟は出来ております。お家のためですもの」
「それでもやっぱり行きたくない?」
由良ははっとしたようにあたしを見た。
その丸い瞳に、大粒の涙がゆっくりと盛り上がる。
はらはらと涙をこぼしながら、由良は小さく頷いた。
「そう。それなら、断ってくるわ」
「っ瑠螺蔚さま!?」
あたしがあっけらかんと言うと、由良がばっと顔を上げた。
「な、なにを…」
「だから、断ってくるんだってば。由良は、結婚するのがヤなんでしょ?」
「や、やめてください!そんな、断ったりしたら、家は…佐々家は…」
由良は蒼白になって言った。
「大丈夫よ。まぁ、あたしにまかせときなさいって」
茫然としている由良にぱちりと目配せ(ウインク)を飛ばす。
それにね、高彬はいくら妹大事だとはいえそれで目が曇るような人でもない。あたしのところにくるってことは、あいつが懸念するようななにか原因が徳川家かその結婚相手にあるってことよ。なら、そこを突くのみ!
覚悟してなさいよ、徳川家〜!
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