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MOONDREAMER:第二章〜
第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第18話 嫦娥と純狐
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書いた筋書きが思い通りにいっている事を確信して勢い付いた彼は、更なる野心の為に暗躍するのであった。
 それが、ヘカーティアの管轄にある地獄から夜を奪うという暴挙であったのだ。
 これを成す事が出来たのも嫦娥の能力にある。
 彼は嫦娥を自分と共に地獄まで連れていき、彼女の力を利用して女神ヘカーティアの力を退ける事でのうのうと地獄から夜を奪ったのであった。
 だが、人道を外れたレベルの悪い事は続かないように世の中は出来ているものなのである。
 それはこの話でも例外ではなかった。純狐は滅多に訪れない嫦娥の留守を狙う事により自身の力を退けられないままに、我が子を奪った夫を亡き者にしてようやく仇を討つ事が出来たのであった。知っての通り、それでも彼女の純化の能力が災いして彼女の心が晴れる事はなく今日まで至った訳であるが。

◇ ◇ ◇

 ここまでの話で、そのような悪逆の極みと言える二人の夫の暴挙を何故そこまで許してしまったのかという考えを抱く人も少なくない事であろう。
 しかし、世の中には相対的に数は少ない筈でありながら、そのような感性を持った者達の存在により平和が脅かされる事が驚く程多いのである。
 二人の夫も、まさにそういう感性の持ち主であったのである。心の内にはドロドロの野心を秘めながらも、外面は至って紳士的で聖人君子を彷彿とさせる振る舞いをしていたのだった。
 だから、彼は二人をまんまと自らの意中に収める事が出来たのだった。いや、そういう野心を持つ人にこそ人心掌握を容易く行ってしまうようなカリスマ性が宿るという世の中の可笑しなメカニズムとなっているのである。
 加えて、そのような者には喋り方一つで周りの人間の精神を高揚させて揺さぶってしまうような神懸かった力があるのである。
 故に、嫦娥も彼に賛同出来ないにも関わらず、彼に嫌われて見限られてしまえば人生が破綻して自分自身を裏切り、身を引き裂かれるような衝動に襲われるだろうという強迫観念から彼に逆らう事が出来なかったのだ。
 だが、そういう人格が形成されてしまうのは、親や周りの者の接し方に問題があるからというケースが多いのである。故に、彼もある意味では被害者だったと言えるのかも知れない。あくまでそういう見方があるという事であるが。

◇ ◇ ◇

 二人の夫が亡き者にさせられて、それで事が解決するという事は残念ながらなかったのである。
 まず、純狐は彼女自身の能力で恨みからは逃れる事が出来なかったのは前述の通りである。
 それだけでなく、嫦娥の方にも深い心の傷を刻む事になってしまったのだ。
 もし、自分があの者を愛していなければ……もし、二人で愛するという選択肢を選びさえしなければ……。
 そのような仮定にしかならないような思考に嫦娥は取り込まれてしまったのである。

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