第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第17話 月の罪人:後編
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った。
「……お辛いですよね」
嫦娥はそう、嫌味でも挑発でもなく、本心からその言葉を勇美に対して投げ掛けるのだった。それに勇美はこう答える。
「ええ、全くです。でも、これは私が選んだ道ですから」
それが勇美の答えだった。彼女には人間として生きる以外の選択肢も、彼女の恩人となった妖怪の賢者からの提案があったのである。それはその妖怪の半分冗談のつもりではあったが。
だが、勇美はそれを断り、敢えて人間として生きる道を選んだのだ。それが、彼女が人間として成長していきたいと願う信念からなのであった。
その想いを胸にこの場に立つ勇美は実に凜々しくあったのである。その様子を嫦娥は感心したように見据えていた。
「いい心構えね。この不利な状況でも、勝負を決して捨ててはいない……」
嫦娥はそんな勇美を羨ましく思うのだった。もしこの子のように、自分にも投げ出さない心があったら……と。
だが、それは仮定の話であり、今それについて考えている場合ではないだろう。彼女は再び目の前の敵を相手にすべく、新たなスペルカードを取り出すのであった。
「【龍符「光の息吹の剣」】」
そして、彼女の手には剣……というには些か無理のある代物が握られていた。
何故なら、それは柄に当たる部分だけの物だったからである。剣が剣たらしめられるにはなくてはならない『刃』に当たる部分がごっそりと存在してはいなかったのである。
だが、勇美はそういうタイプの剣には心当たりがあるのだった。何故なら、彼女自身もそういう剣を使った事があるからなのだ。
その勇美の読みは見事に的を得る形となるのだった。嫦娥はその剣の柄を高らかに掲げると、その付け根から光が溢れ出して、そのまま刃の形を形成したのだから。
それは、正にドラゴンのブレス、龍の息吹を彷彿とさせるものであった。超能力、霊力、妖力と来て、今度は龍の力のようである。
龍……いよいよ以て大それた存在が来たなと勇美は思うのだった。そして思う。
天界の素敵なあの人は、リュウグウノツカイ……つまり魚が妖怪化した存在であり、龍ではないのだ。寧ろ彼女が仕える存在がそのものの龍神であるのだが。
そして、紅魔館へ赴いた時には人間である自分に色々と気を利かせてくれる温厚な妖怪である門番のあの人。詳細は分かってはいないが、もしかしたら龍の化身であるかも知れないという憶測が周りで飛び交っているのである。
なので、勇美は今後『龍』なる存在とも関わる機会があるかも知れないと期待に胸を膨らませる所なのであった。
だが、まずは目の前の龍の力を携えた得物にどう対抗するかを考えなくてはならないだろう。
あれの光エネルギーの出力は半端ない事が遠目からでも分かる。まるでガスバーナーの炎のように高密度、高出力の代物であるのだった。あのような攻撃
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