第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第17話 月の罪人:後編
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入れるのだ。
「【妖符「鳳凰の羽根扇子」】」
今度のは日用品に分類されるような物で、見た目は武器とはかけ離れているだろう。
だが、それが立派な武器として造られた物である事も幻想の世界ではよくある事であるのを勇美はよく知っているのだった。──何せ彼女の知り合いには二人程その該当者がいるのだから。
そして、勇美の読みは正しかった。超能力、霊力、続けて今回は『妖力』であるようだ。
こうなれば、次に対処すべき事は粗方決まってくるのであった。
そのように勇美が考えているとも知らず、嫦娥はその手に持った赤々とした派手な扇子を勇美目掛けて振り翳したのだ。
それにより、扇子から一気に熱風が吹き荒れたのである。やはり、これはただの扇子ではなく立派な武器だったという事だ。
物凄いエネルギーの奔流が巻き起こる。だが、勇美は決してそれに怖じけづく事はなかった。
「【金風「妖怪退治の聖なる嵐」】っ!!」
その勇美の命令により、既に黄金色の送風機と化したマックスから風が放出されたのだ。
勿論、それは単なる強風ではなかった。名前の通り見た目鮮やかな黄金に輝く風なのであった。
勇美の考えた事はこうだ。まず、妖力を伴う──即ちそれは妖怪の力。
そして妖怪は基本的に夜に力を発揮する存在である。つまり逆に考えれば昼には本来の力は出しきれないのだ。
そこで勇美は昼間の象徴である太陽の力を使うべく、まず『天照大神』の力を取り入れる事を想定していた。
そして、今しがた敵は扇子を振りかざして熱風を放ってきたのである。
故に、目には目を、風には風をという事で風神の力も借りて今の黄金の嵐を生み出したという事なのであった。
その目論見は見事に功を奏したようである。瞬く間に黄金の嵐は妖力による熱風を飲み込んでいき、一気にそれを押し流してしまったのだった。
そして、後には嵐の後の静けさとでも言うべきか。全くを以ての静寂がそこには訪れたのである。加えて、お決まりの如く嫦娥の持つ武器の扇子はその場で砕けてしまった。
その様子すらも彼女は落ち着いた様子で見据えながら言葉を紡いだ。
「この『鳳凰の扇子』すらも防ぐとは、ここまでやるとは思ってみませんでした……ですが……」
嫦娥は勇美を褒めつつも、どこか含みのある言葉を口にしていた。それに対して勇美は「やっぱり」といった感じで返す。
「やはり……分かりますか……」
そう呟く勇美の様子は、見るからに息が上がっているものであった。それに対して嫦娥は平常通りの立ち振る舞いをしている。
お忘れかも知れないが、嫦娥は蓬莱の薬を飲んだ、不老不死の蓬莱人なのである。そして勇美は脆弱な人間なのだ。
そこには、越えられない壁があるのだった。そう、体力面では雲泥の差が二人には存在しているという事なのであ
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