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MOONDREAMER:第二章〜
第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第16話 月の罪人:前編
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「豊姫さん、鈴仙さん。あなた達の気持ちはとても嬉しいです。はっきり言ってとても心強いです。ですが……」
「勇美ちゃん?」
「勇美さん?」
 勇美の含みのある物言いに、豊姫と鈴仙は頭に疑問符を浮かべた。そして、その疑問を払拭すべく勇美が放った言葉は実に驚愕すべき内容であったのだ。
「どうか、ここは私一人で戦わさせてもらえませんか? この人とは以前から私だけで戦わなければならないと思っていたんです」
 突拍子もなく、かつ無謀な申し出であった。だが、それを聞いた豊姫の答えは至って穏やかなものなのだった。
「分かったわ、勇美ちゃん。あなたの好きにやるといいわ」
 そう応えるのは、彼女が勇美の事を自分の『同志』だと認めているからであった。だから、同じ志を持つ者の意見は尊重してなんぼだと豊姫は思う所なのだ。
「ありがとうございます、豊姫さん」
 勇美はそんな豊姫の心意気に感謝しながら、自分の名の通りに勇ましく戦いの舞台へと躍り出るのだった。
「では、嫦娥さん……ですよね。始めましょうか?」
「あなた一人で大丈夫?」
 そんな勇美に対して、嫦娥は割と本気で気遣うような素振りを見せてくる。その対応に勇美は今まで抱いてきた疑念が『もしかして本当』かも知れないと思う所なのだ。
「ええ、もう決めた事ですから。迷いはありません」
「そう……」
 嫦娥は静かにそう呟くと、勇美と向かいあって臨戦態勢となるのだった。
 これが勇美にとって一世一代の戦いとなるだろう。故に彼女は気を引き締めて相手に向き合った。

◇ ◇ ◇

「私の力でこの場に結界は張ったわ」
「豊姫さん、ありがとうございます」
 豊姫の計らいに対して、勇美はお礼を言う。
 そう、今これから月の都の中で戦いを始めるに辺り、周りに被害が出ないようにとの豊姫の判断だったのである。
 これで、勇美と嫦娥の両者とも、都の事を懸念せずに思う存分に戦えるというものだろう。
 そして、月の罪人という未知数の存在との戦いはここに始まったのであった。そこで嫦娥はこう口にする。
「玉兎達から聞いているわ。あなたは後手に出る方が得意だと」
「はい、よくご存知で」
 丁寧に相手の特性を指摘する嫦娥に対して、勇美は複雑な気持ちで以てそれに答えるのだった。
 そして、相手は『神を退ける』という能力を持っている事以外、全くの未知の存在なのだ。故にどういう戦い方をしてくるか勇美は神経を張り詰めさせて感じ取る事にする。
「では、お言葉に甘えさせてもらって、私から攻めさせてもらいましょう……」
 そう静かに嫦娥は言うと、懐からスペルカードを取り出す。その仕草一つだけで、どこか神秘的な雰囲気が彼女からは醸し出されるのだった。
 そして、注目すべき月の罪人のスペル名宣言の瞬間がここにやって来たの
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