第四章 ダークサイドオブ嫦娥
第16話 月の罪人:前編
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あ、全くだよ。この能力があるから私と純狐でも今まで奴を捉える事が出来なかったのだからな」
勇美の意見にヘカーティアも同意する所であった。これの為に今まで手こずってきたのだから。
そして、今までの経験である程度勘が働くようになってきた勇美は、もしやと思い依姫へとその口を向ける。
「……もしかして依姫さんの……」
その疑問はどうやら見事に的を得たようであった。依姫は無言で頷くと、諭すようにこう答えを言うのだった。
「ええ、私の神降ろしもあの者の力で退けられてしまうわ。だから、私達も彼女には手出し無用だったという事よ」
更に事の詳細を突き詰めるとこうであった。綿月姉妹という強大な存在がいながら、彼女達に警戒すらされる程であったのが嫦娥である。
その事も、綿月姉妹の実力を良く知る勇美にはそれがいかに脅威であるかが感じられるのであった。
「そんな……、依姫さんやヘカーティア様程の人が手出し出来ないなんて……」
その事実に勇美は絶望感すら覚えるのだった。無理もないだろう。彼女達の底力というものは勇美程知る者は限られてくるのだから。だから、これがいかに一大事かは良く分かる所であるのだ。
そんな彼女へと一筋の希望の光を差し与えるかのように依姫はこんな事を言うのだった。
「でも、安心しなさい勇美」
「依姫さん?」
一体何事だろうかと勇美は首を傾げながら依姫へと聞き返した。そして彼女へと目を向けると、普段の厳格な雰囲気とは違う、優しく包み込むかのような様相を依姫は醸し出していた。
そして、菩薩のようなその振る舞いの下、彼女は勇美にこう言う。
「貴方の『マックス』の力なら通用するでしょう。確かに神降ろしの力を動力にして発揮しますが、あくまで戦うのは彼自身なのですから」
「えっ……?」
それには勇美は再度驚く所であった。ここに来て、希望となるのが自分自身だという事だと言われたも同然だからである。
当然その事実には戸惑う勇美であった。だが、今までの経験により心身共に成長した勇美は、ここでその期待に応える事にしたのだった。
「分かりました。私が頼りなら、嫦娥って人と私が戦います」
勇美は迷う事なくそう言い切ったのだった。それに対して他の者も応えていく。
「神の力を使わない私なら大丈夫だからね勇美ちゃん。一緒に戦おうね」
「私も友達を詳細の知れない敵と一人で戦わせる趣味はないですよ」
そう口々に言うのは豊姫と鈴仙であった。無論勇美は彼女達の力は良く知る所であり、非常に頼もしいのであった。
特に鈴仙は先の月の異変で常に自分と共に戦ってくれた仲間であるのだ。彼女の実力は勇美は良く分かっているのだ。
これは勇美にとって、とてもありがたい申し出であった。だが、この展開になった時点で勇美の腹は既に決まっていたのである。
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